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建築設計事務所の人手不足を解消|BIMと外注化による業務効率化戦略

  • 執筆者の写真: design H
    design H
  • 9月1日
  • 読了時間: 7分

更新日:9月8日


電気設備設計の委託費用と発注のポイント【外注検討者向けガイド】
「人手不足で案件を断らざるを得ない」「若手が育たず、ベテランの負担ばかりが増える」「法改正で業務量が爆発的に増えた」。多くの意匠設計事務所が、このような深刻な課題に直面しています。このままでは、事業の成長どころか、存続すら危ういかもしれません。しかし、この危機的状況を乗り越え、成長のチャンスに変える強力な戦略が「BIM」と「外注化」の組み合わせです。この記事では、BIMと外注化をいかに連携させ、業務を効率化し、持続可能な経営基盤を築くか、具体的なステップと成功のポイントを徹底解説します。

なぜ建築設計事務所は人手不足から抜け出せないのか?

| 統計で見る建築業界の現状:深刻化する労働力不足と高齢化

建築設計事務所が直面する人手不足は、感覚的なものではなく、統計データにも明確に表れている構造的な問題です。





| 追い打ちをかける2025年法改正:増大した業務負荷の現実

この深刻な人手不足に追い打ちをかけているのが、2025年4月1日に施行された建築基準法・建築物省エネ法の改正です。この改正により、原則としてすべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務付けられ、さらに「4号特例」が縮小されました。具体的には、これまで審査が簡略化されていた木造2階建て住宅など(新2号建築物)においても、構造安全性の確認や省エネ性能に関する図書の提出が必須となり、設計事務所が担うべき計算業務や書類作成の負荷が大幅に増大したのです。

これにより、一人ひとりに求められる業務の量と専門性が格段に高まり、自社内だけで完結させようとすれば、深刻な業務過多に陥るリスクがあります。



| 人手不足が引き起こす経営リスク:機会損失と品質低下

人手不足と業務負荷の増大は、設計事務所の経営に直接的なリスクをもたらします。最もわかりやすいリスクが「受注機会の損失」です。魅力的な案件の相談があっても、社内の設計キャパシティが限界に達していれば、断らざるを得ません。さらに、限られた人員で増え続ける業務をこなそうとすれば、長時間労働が常態化し、従業員の疲弊や離職につながります。結果として、図面のチェック体制が甘くなり、品質の低下を招くといった負のスパイラルに陥る可能性も否定できません。実際に、人手不足が原因で倒産する建設関連企業は、2023年に前年比2.7倍に急増しており、これは決して他人事ではないのです。




解決策は「BIM」と「外注化」の戦略的組み合わせ

| BIM:単なる3Dツールではない「情報」を持つ設計手法

BIMを単なる「3DCADの進化版」と考えているなら、その認識を改める必要があります。3DCADが作成するのが形状情報だけを持つ「立体的な絵」であるのに対し、BIMが作成するのは、壁の材質や窓の性能、コストといった様々な「情報(属性情報)」が付与された「デジタルの建築物そのもの」です。この「情報を持つ」という特性が、設計プロセスを根本から変革し、業務効率を飛躍的に向上させるのです。



| 外注化:リソース不足を補うための外部パートナー連携

もう一つの鍵が「外注化(アウトソーシング)」です。人手不足が常態化する中、すべての業務を自社内で完結させようとするのは現実的ではありません。実施設計図面の作成や各種申請業務、省エネ計算といった、専門性が高く時間もかかる一方で、ある程度定型化が可能な業務を、信頼できる外部パートナーに委託する。これにより、社内の貴重なリソースを企画やデザインといった、より付加価値の高いコア業務に集中させることが可能になります。これは、単なる業務量の調整ではなく、企業の競争力を高めるための積極的な経営戦略です。



| 相乗効果を生む連携:BIMが外注の品質と信頼性を高める

そして最も重要なのが、この「BIM」と「外注化」を戦略的に組み合わせることです。従来の外注では、「成果物の品質のばらつき」や「コミュニケーションの齟齬」が大きなリスクでした。しかし、BIMを基盤とした連携では、発注者と外注先が同じBIMモデル(単一の情報源)を共有して作業を進めるため、情報の伝達ミスや認識のズレが劇的に減少します。BIMは、外注における最大の懸念であった「信頼性」を技術的に担保し、両者の連携を成功に導く強力な触媒となるのです。




【外注化戦略】外部リソースを最大限に活用する方法

| 外注化がもたらす3つの直接的メリット


| 失敗しない協力会社の選び方

1 実績と専門資格者の在籍を確認する

大手デベロッパーからの継続受注実績や、一級建築士などの有資格者が複数在籍する組織体制かを確認。


2 BIMへの習熟度と具体的な活用実績を評価する

「ソフトが使える」レベルでなく、意匠・構造・設備を統合したBIMモデルの提供実績などを具体的に確認。


3 円滑な連携を可能にするコミュニケーション能力を見極める

レスポンスの速さや意図の汲み取り能力など、対等なパートナーとして協業できる相手かを見極める。




【BIM戦略】社内業務を根本から効率化するBIM活用術

| BIMによる直接的な生産性向上効果

図面間の不整合を解消

モデル修正で全図面が自動更新。膨大な修正作業から解放され、設計業務に集中できます。

手戻りを未然に防止

干渉チェック機能で、施工段階での手戻りを設計段階で防ぎ、コストと工期を削減します。

積算業務を高速化

数量拾いを自動化し、積算業務の負担を大幅に軽減。迅速で正確なコスト算出が可能です。



| BIMを基盤とした新しい協業ワークフロー

共通データ環境(CDE)で情報共有を円滑に

クラウド上で関係者全員が常に最新情報にアクセス。情報伝達のタイムラグやミスを根本的に防ぎます。


外注先とのデータ連携をシームレスに

CDE上でリアルタイムに情報共有し、「古い図面で作業」といった致命的なミスを防止。外注の品質と信頼性が向上します。




 明日から始める業務効率化へのロードマップ

1 現状の業務プロセスを可視化し、課題を洗い出す

「図面修正に30%の時間を費やしている」など、具体的な課題を洗い出し、BIMや外注化を導入すべきポイントを明確にします。


2 小規模プロジェクトから試験導入する

「スモールスタート」で試験的に導入し、自社に合ったツールや協力会社、新しいワークフローの課題を見つけ出します。


3 明確な指示と連携のためのルールを整備する

指示書作成の習慣化や、BIMデータの命名規則など、事前のルール作りが後の混乱を防ぎ、連携をスムーズにします。


4 継続的な教育で組織全体のBIMスキルを底上げする

経営層がリーダーシップを発揮し、研修やセミナーを活用して、組織全体のBIMスキルを計画的に引き上げます。




まとめ:BIMと外注化で実現する、持続可能な設計事務所の未来

設計事務所を取り巻く人手不足と業務負荷の増大は、もはや避けて通れない厳しい現実です。しかし、この危機は、旧来の働き方を見直し、新しい時代に適応するための変革のチャンスでもあります。


その変革の中核をなすのが、「BIM」と「外注化」の戦略的な組み合わせです。BIMによって社内業務の生産性を根本から改善し、外注化によって限られたリソースを最も価値の高い業務に集中させる。そして、BIMを共通言語とすることで、外部パートナーとの連携をよりスムーズで信頼性の高いものへと進化させる。


この新しいワークフローこそが、これからの設計事務所が厳しい競争を勝ち抜き、持続的に成長していくための鍵となります。まずはこの記事で紹介したロードマップを参考に、自社の課題を洗い出し、小さな一歩から業務効率化への取り組みを始めてみてはいかがでしょうか。



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