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建築設備設計の費用相場と見積りのポイントを解説

  • 執筆者の写真: design H
    design H
  • 4月14日
  • 読了時間: 6分

更新日:4月22日


建築設備設計の費用相場と見積りのポイントを解説
設備設計は、建築プロジェクトにおいて「見えないけれど最も重要な投資」です。しかし、一般の方や施主、設計初心者にとっては、費用の相場や見積書の見方が不明瞭なことが多く、「この金額は妥当なのか?」「どこまでが設計者の仕事なのか?」という疑問があると思います。本記事では、建築設備設計にかかる費用の内訳、建物の種類別の相場、見積書を見るときの注意点、そしてコストダウンの実践例まで、現場の実態に即した形で具体的に解説します。



建築設備設計にかかる費用の内訳

設備設計費用は、単に「図面を描く」だけではなく、次のような業務ごとに分類され、それぞれが費用に反映されます。


① 基本設計費(全体計画・機器選定の方針立案)

  • 建物用途や規模に応じた空調・電気・給排水の方式選定

  • 設備機器の初期選定と容量計算(空調負荷計算、照度計算 等)

  • 設備スペース(PS、EPS、MBなど)の配置設計

  • 初期の建築・構造設計者とのコーディネーション


このフェーズの成果物:ゾーニング図、基本設備配置図、計画書(簡易版)

目安:設計全体費用の15〜25%程度



② 実施設計費(図面作成・法令対応)

  • 実際の施工に使われる詳細な図面の作成(系統図、詳細図、平面図)

  • 法令・規格対応(建築基準法、消防法、建築物省エネ法等)

  • 設備仕様書・材料選定・負荷計算(冷暖房、照明、コンセント負荷)

  • 意匠・構造設計との干渉調整やBIMモデリング(導入時)


このフェーズの成果物:実施設計図一式(空調・給排水・電気 等)

目安:設計全体費用の50〜60%程度



③ 工事監理・図書提出・確認申請対応費

  • 官公庁への設計説明・技術資料作成(公共案件で特に重要)

  • 設備確認申請の準備(省エネ計算書、適合判定など)

  • 工事現場での設計図解釈・変更指示(図面照合・承認図チェック)

  • 設計照査・中間検査・竣工検査への同行と設計意図説明


目安:設計全体費用の20〜30%程度





案件別の相場(戸建て/マンション/公共施設)

建物の種類によって設計内容や工数が変わるため、相場も大きく異なります。


戸建て住宅の設備設計費用(参考価格:15万~50万円)

【特徴】

  • 設備構成が比較的シンプル(ルームエアコン、給湯器、照明、コンセント)

  • 規模:30~50坪程度

  • 設備設計と建築設計が兼務の場合も多い


【費用構成】

  • 基本設計:約5〜10万円

  • 実施設計:約10〜30万円

  • 法令対応(省エネ計算 等):5〜10万円


【注意点】

高性能住宅(ZEHやパッシブ設計)では空調方式や断熱計算が複雑化し、設計費も上がる傾向があります。



マンション・集合住宅(参考価格:1戸あたり1万〜3万円)

【特徴】

  • 給水・排水・電気の幹線ルートが重要

  • 集合住宅全体での負荷分散やバランス計算が必要

  • 給湯・空調の方式(セントラル or 個別)がコストに影響


【相場例(30戸)】

  • 設備設計費:30万円~90万円

  • 住戸以外の共用部(管理室、エントランス、機械室など)を含めると上乗せ



公共施設(参考価格:工事費の3〜7%)

【特徴】

  • 設計の責任が重く、品質確保・書類整備に高い精度が要求される

  • 提出図書や技術提案書の作成が業務量に大きく影響


【相場例(工事費1億円)】

  • 設備設計費:300万~700万円(設計業務委託書に明記)

  • 公共建築工事標準積算基準に準じた見積りが基本


国土交通省「官庁施設の建築設備設計基準」 https://www.mlit.go.jp/



※本記事で紹介している設計費用の相場は、あくまでも一般的な目安です。実際の費用は、建物の用途・規模・設計範囲・求められる性能・地域差・発注者の要望などによって大きく変動します。ご相談の際は、案件の具体条件をもとに、設計事務所や専門業者と十分に打ち合わせを行い、正式なお見積りをご確認ください。

案件別の相場(戸建て/マンション/公共施設)





見積書の見方と注意点(初心者向け解説)

見積書を読む際には、「業務範囲」と「計算根拠」の2点を確認することが重要です。


業務範囲が明記されているか?

「設備設計一式」とだけ書かれている見積は避けましょう。たとえば:

  • 空調設備:台数算出、負荷計算、配管ルート設計を含むか?

  • 電気設備:受変電設備も含むのか、照明設計だけなのか?

  • 現場対応:立会・設計照査・変更対応が含まれるのか?


項目ごとに「設計範囲」を明示してもらうことで、後からの「想定外追加費用」を防げます。



費用の算出根拠が妥当か?

  • 時間単価制なのか?(例:1時間あたり5,000〜8,000円など)

  • 成果物単位なのか?(例:図面1枚3万円など)

  • 技術者ランクによる単価の違い(例:主任設計者は時給1万円など)も確認が必要です。


※公共案件では技術者単価が国で定められていることもあります。。





コストダウンの考え方と実践例(現場対応付き)

設計の質を保ちつつ、コストを抑えるには「手戻りを防ぐ」「標準化を活用する」「段階的発注にする」などの工夫が有効です。


ヒアリング強化による設計変更の削減

事前に「エアコンの見せ方」「コンセント数・位置」「将来的な拡張希望」などを明確にヒアリング。設計のやり直しが減り、時間コストを削減できます。



設備ルートの集約化による資材・工事費圧縮

PS(パイプスペース)の位置を住戸間で共通化し、配管距離を短縮することで、工事費だけでなく設計図面作成工数も削減できます。



BIM・AIツールの活用による初期検討の高速化

たとえばRevitでの干渉チェック、EnergyPlusでのエネルギー計算、AI搭載ツールでの初期負荷計算自動化などにより、検討時間を1/2〜1/3に短縮可能です。

コストダウンの考え方と実践例(現場対応付き)





まとめ|見積と設計費用は“内容の透明性”がカギ

建築設備設計の費用は決して一律ではなく、建物の用途・規模・設計範囲・求められる精度によって大きく異なります。 だからこそ、見積書では「どこまでやってくれるのか」「その金額はどう決まっているのか」がきちんと示されていることが非常に重要です。

安さだけで選んでしまうと、後から追加費用が発生したり、肝心の設計品質が担保されなかったりするリスクがあります。設計費=未来の建物の使いやすさ・安全性・省エネ性能への投資と考え、納得のいく説明ができる設計者と仕事を進めていきましょう。




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