建築設備設計の未来|BIM・IoT・スマートビルとの関係性
- design H
- 4月14日
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更新日:4月22日

■ BIMの活用と設備設計への影響
BIMとは?図面との違いをやさしく解説
BIM(Building Information Modeling)は、建物の形状だけでなく、素材、寸法、設備機器の情報などを含んだ“情報付き3Dモデル”です。従来の2D CADでは見落としがちな配管の交差や天井裏スペースの干渉も、BIMなら視覚的に確認できます。設備設計では、配線・配管・空調ルートの複雑な構成を直感的に設計・調整できるのが大きな強みです。
設備設計におけるBIMの導入メリット
BIMのメリットは「見える化」と「連携性」です。設計の早い段階から空調・電気・配管が干渉しないよう調整できるため、現場での修正工事を減らせます。また、照明や配線経路、設備機器の情報が一つのモデルに集約されることで、建築・構造・設備の3分野間での情報共有もスムーズになります。
BIM導入の現状と課題
日本では国土交通省が主導してBIMの活用を進めていますが、民間の中小企業では「高額なソフト費用」「人材不足」「社内教育の手間」が課題です。特に設備分野では、BIM操作に習熟した設計者がまだ少なく、実際の業務に活用できる人材の育成が急務です。導入初期は簡易モデルから始め、段階的にスキルを高める方法も効果的です。
■ IoT・AI技術が変える建物の設備管理
IoTが実現するスマート設備とは?
IoT(Internet of Things)を活用すれば、空調や照明、給湯などの設備機器がインターネットにつながり、遠隔操作や自動制御が可能になります。例えば、センサーで人の動きを検知し、照明をON/OFF、自動で換気量を調整するなど、「無駄を省く快適な環境づくり」ができます。これは特にオフィスや商業施設での省エネに有効です。
AIによる設備診断・予知保全の可能性
AIを用いることで、設備から収集した膨大なデータを解析し、「このポンプは通常より振動が多い」「空調の効きが落ちてきている」といった異常兆候を事前に察知できます。これを予知保全(Predictive Maintenance)といい、突発的な設備トラブルを未然に防ぎます。AI診断はビルの運用コスト削減にも直結し、今後の標準技術となりつつあります。
IoT設計における設計者の関わり方
IoT対応の設備設計では、センサーの配置場所、制御ロジック、通信の安定性までを設計段階で考慮する必要があります。たとえば、人感センサーをどの高さ・範囲に設置するか、無線通信が遮断されないように障害物を避ける配線計画を立てるなど、「IT+建築」の複合スキルが求められます。設計者がIT担当者と連携する場面も増えています。

■ スマートビル化における設備設計者の役割
スマートビルとは?従来ビルとの違い
スマートビルは、建物全体をセンサー・ネットワークでつなぎ、自動制御・遠隔監視・省エネ運用を実現する次世代型ビルです。従来の「設置して終わり」の設備設計とは異なり、「運用・メンテナンスまで見据えた設計」が求められます。例えば、エネルギー使用状況をモニターし、最適化するBEMS(ビルエネルギー管理システム)などが典型例です。
設備同士の連携設計とは?
照明、空調、ブラインド、セキュリティシステムなど、異なる設備を一つの制御系でつなぐ設計が求められます。たとえば、太陽光の入射量に応じてブラインドと照明を自動調整し、快適性と省エネの両立を実現します。こうしたシステム連携を考慮するためには、「単品機器を置くだけ」から、「建物の動きに合わせた制御の仕組みを描く」視点が必要です。
スマートビル設計におけるITとの協働
スマートビルでは、設計者がITエンジニアや制御システム開発者と協働する場面が増えています。設備設計図だけでなく、通信回線の設計やAPI連携仕様の理解も求められるため、設計者にもある程度のITリテラシーが必要です。「設計だけで完結しない」複合プロジェクトに対応するためには、チーム間連携力もカギになります。
■ 今後のトレンドと設計者に求められるスキル
BIM・IoT時代に求められる学び直し(リスキリング)
従来のCADや手描き図面の知識に加え、今後は「BIM操作」「センサー連携」「クラウド環境の理解」など、新しいスキルの習得が必須です。これらの技術はまだ成熟しきっていない分、今学べば設計現場で重宝されます。オンライン学習プラットフォーム(LinkedIn Learningなど)も活用し、リスキリングの習慣をつけることが大切です。
海外でのトレンドと日本の動きの違い
欧米ではZEBやスマートビルの設計基準が進んでおり、BIM・IoTが標準的に導入されています。日本では2025年に省エネ法改正があり、ZEB・BIM導入が本格化すると予測されています。海外事例の取り入れや英語資料の読解力も、これからの設計者にとって重要なスキルです。グローバル基準に触れることが、日本の設備設計を進化させる鍵となります。
若手設備設計者のチャンスとは?
技術の大転換期である今、経験年数に関係なく、新しいことを吸収できる若手にこそチャンスがあります。BIMやスマート設備の導入初期段階では、フラットな知識レベルからのスタートになるため、「若くても頼られる設計者」になる可能性が高いです。これからの設備設計は“習得スピード”が価値になる時代です。

■ まとめ|デジタル技術とともに進化する設備設計の未来
BIM、IoT、スマートビルなど、最新のデジタル技術は、建築設備設計に革命をもたらしています。今後の設計者には、「情報を扱う力」「連携を設計する力」「データで判断する力」が求められるようになります。
初心者の方はまず、BIMやスマートビルの概念を理解することから始め、少しずつ関連ツールに触れていくのがおすすめです。設備設計は、人の暮らしを支え、社会に貢献できるやりがいある仕事。だからこそ、新しい時代の技術に前向きに向き合い、自分の可能性を広げていきましょう。

建築設計は、単に建物を建てるだけでなく、人々の暮らしや未来を創造する重要なプロセスです。アッシュデザインは、お客様の理想を形にするために、豊富な経験と確かな技術でサポートいたします。ぜひ弊社のサービスページをご覧いただき、お気軽にご相談ください。