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建築施工図の書き方【見やすい・分かりやすい・漏れがない】3つの原則と作成手順

  • 執筆者の写真: design H
    design H
  • 8月24日
  • 読了時間: 4分

更新日:8月31日


電気設備設計の委託費用と発注のポイント【外注検討者向けガイド】
建設現場で職人が手にする「施工図」。この一枚の図面の品質が、工事のスムーズさや建物の完成度を大きく左右します。しかし、単に設計図をなぞるだけでは、現場で本当に役立つ施工図は描けません。この記事では、職人から「この図面は分かりやすい!」と信頼される高品質な施工図を描くための「3つの大原則」から、具体的な作成手順、ミスを防ぐチェックリストまでを、図解を交えてステップ・バイ・ステップで徹底解説します。

高品質な建築施工図が持つべき3つの大原則

優れた建築施工図には共通する3つの原則があります。この原則を意識するだけで、図面の品質は劇的に向上し、現場での手戻りやトラブルを未然に防ぐことができます。

原則

ポイント

良い例

悪い例

1. 見やすさ

一目で情報がわかる

・線種や太さをルール化

・余白を活かしたレイアウト

・強調箇所を絞って色や太線を使用

・過度なハッチング(模様)

・不必要な多色刷り

・情報が密集しすぎている

2. 分かりやすさ

直感的に理解できる

・簡潔で誤解のない言葉を選ぶ

・注記は1箇所にまとめる

・シンプルな線や記号で表現

・同じ意味の注記が複数ある

・複雑な言い回し

・冗長な線や表現

3. 網羅性

必要な情報に漏れがない

・作業に必要な寸法や仕様をすべて記載

・誰が見ても疑問が生まれない

・専門工事間の取り合いが明確

・寸法や仕様が抜けている

・「要確認」などの曖昧な指示

・職人がその場で判断に迷う




思考のフレームワーク:「分解・分析・翻訳」メソドロジー

高品質な施工図は、いきなりCADソフトに向かって線を引く作業から生まれるのではありません。その前段階にある、設計図の情報を深く理解し、再構築する「思考のプロセス」が極めて重要です。


| 設計図を「分解」して要素を把握する

複雑な設計図書を、管理しやすい単位に細分化します。





| 各要素を「分析」して意図と課題を理解する

分解した各要素を詳細に分析し、「なぜこの寸法なのか?」「なぜこの納まりなのか?」といった設計意図を掘り下げ、施工上の課題や不整合を洗い出します。



| 職人目線で情報を「翻訳」し、再構築する

分析した情報を、実際に図面を使う専門工事業者の視点に立って、彼らが必要とする情報に取捨選択し、分かりやすく再構築します。


設計図

【分解】

【分析】

【翻訳】

高品質な施工図




【実践】平面詳細図の作成手順をステップ解説

ここでは、思考のフレームワークを基に、最も基本的な「平面詳細図」を作成する手順を4ステップで解説します。

ステップ

作業内容

ポイント

Step 1

通り芯・柱芯の作図

すべての基準となる線。他の線と区別できるよう、細く薄い線で正確に描きます。

Step 2

構造体(壁・柱)の作図

基準線をもとに、壁や柱を描きます。まずは下書き線で全体の整合性を確認し、その後清書します。

Step 3

開口部(建具)の作図

ドアや窓を描き込みます。開き勝手や窓の種類などを記号で正確に表現し、位置情報も明確にします。

Step 4

設備機器・仕上げ・注記の記入

設備機器の配置、床仕上げの範囲、寸法線、部屋名などを漏れなく記入し、図面を完成させます。




作図ミスを防ぐためのチェックリスト活用術

ヒューマンエラーを防ぎ、品質を安定させる強力なツールが「チェックリスト」です。



| チェックリストに含めるべき必須項目

カテゴリ

主なチェック項目

基本情報

工事名称、図面名、縮尺、作成日、方位記号は正しいか?

設計図との整合性

設計図の意図や条件から逸脱していないか?

寸法・仕様の正確性

各部の寸法、材料の仕様、仕上げ表記は正しいか?

専門工事間の取り合い

電気、水道、空調などの設備が、構造体や内装と干渉しないか?

法的・規格の遵守

建築基準法や各種基準類と整合性が取れているか?

施工性の確認

図面通りに施工可能か?作業スペースは確保されているか?



| レビュープロセスで品質をさらに高める

チェックリストによる自己チェックに加え、第三者によるレビュー(査読)で品質をさらに向上させましょう。




まとめ

高品質な施工図を作成するための重要なポイントを振り返ります。


高品質な施工図の3原則  ↪︎「見やすい」「分かりやすい」「漏れがない」を常に意識する。

思考のフレームワーク  ↪︎作図の前に、設計図を「分解・分析・翻訳」する思考プロセスが不可欠。

実践的な作成手順  ↪︎基準線 → 構造体 → 開口部 → 詳細情報というステップで、論理的に作図を進める。

品質管理  ↪︎チェックリストと第三者レビューを活用し、ヒューマンエラーを防ぎ、品質を担保する。


施工図作成は、設計者の意図を汲み取り、現場の職人の視点に立って情報を再構築する、高度なコミュニケーション技術です。今回紹介した原則と手順を実践し、現場から信頼される施工図を作成していきましょう。




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