受変電設備や変圧器、幹線の容量を決めるとき、建物にあるすべての機器の容量を単純に足し合わせると、実際の使われ方よりずっと大きな設備になってしまいます。なぜなら、機器がすべて同時に、しかも常にフル稼働することはないからです。

この「実際にどれだけ電気を使うか」を見積もるための指標が、需要率・負荷率・不等率です。この記事では、3つの指標の意味と計算式、そして受電設備や幹線の容量計算にどう使うのかを、計算例を交えて分かりやすく解説します。

需要率・負荷率・不等率とは

需要率・負荷率・不等率は、設備の容量と、実際に使われる電力(需要電力)の関係を表す3つの指標です。いずれも電気設備の容量を、過大でも過小でもなく適切に決めるために使います。

まず前提として、いくつかの言葉を整理します。

  • 設備容量:建物にある負荷(機器)の定格容量をすべて合計したもの。
  • 最大需要電力:ある期間で実際に使われた電力のピーク値。
  • 平均需要電力:ある期間で実際に使われた電力の平均値。

設備容量は「めいっぱい使ったら」の理論上の最大で、実際の最大需要電力はそれより小さくなります。この差を数値で扱うのが3つの指標です。

アッシュくんメモ:家の家電を全部同時に最大で動かすことはないよね。エアコン・電子レンジ・ドライヤーが一斉に全開、なんてまず起きない。その『同時には使わない』を数字にしたのが需要率たちなんだ。

需要率とは

需要率は、設備容量に対して、実際の最大需要電力がどれくらいの割合かを表す指標です。すべての機器が同時にフル稼働するわけではないため、通常は100パーセントより小さくなります。

需要率 = 最大需要電力 ÷ 設備容量 × 100 [パーセント]

たとえば設備容量の合計が100キロワットの建物で、実際の最大需要電力が60キロワットだったとします。このとき需要率は 60 ÷ 100 × 100 = 60パーセントです。設備容量の6割ぶんのピークで足りている、という意味になります。用途によって需要率の目安は異なり、事務所・店舗・住宅などで傾向が変わります。

負荷率とは

負荷率は、最大需要電力に対して、平均需要電力がどれくらいの割合かを表す指標です。設備がどれだけ平準化して使われているか、いわば「使い方の効率」を示します。

負荷率 = 平均需要電力 ÷ 最大需要電力 × 100 [パーセント]

たとえば最大需要電力が60キロワット、期間中の平均需要電力が40キロワットなら、負荷率は 40 ÷ 60 × 100 = 約67パーセントです。負荷率が高いほど電力を一定して使っている状態で、設備を効率よく使えています。逆に負荷率が低い場合は、短いピークのために大きな設備を用意していることになり、無駄が生じやすくなります。なお、複数の負荷や建物をまとめて全体でみた負荷率を総合負荷率と呼び、電力の使われ方を評価する際に用います。

不等率とは

不等率は、複数の負荷や需要家をまとめたとき、それぞれのピークが同じ時間に起きないことを表す指標です。各負荷の最大需要電力の合計を、全体を合わせたときの最大需要電力(合成最大需要電力)で割って求めます。

不等率 = 個々の最大需要電力の合計 ÷ 合成最大需要電力

ピークの時間帯がずれているほど、全体の最大は個々の合計より小さくなるため、不等率は必ず1以上になります。たとえばA系統の最大が30キロワット、B系統の最大が40キロワットで合計70キロワットでも、両者のピークがずれていて全体の最大が50キロワットにおさまるなら、不等率は 70 ÷ 50 = 1.4です。不等率が大きいほど、設備をより小さくまとめられることを意味します。

3つの指標の関係と使い方

これらの指標は、受変電設備や変圧器、幹線の容量を求めるときに組み合わせて使います。複数の負荷をまとめた合成最大需要電力は、次のように見積もれます。

合成最大需要電力
= (設備容量 × 需要率)の合計 ÷ 不等率
この容量をもとに、変圧器・幹線・契約電力を決める

考え方の流れは次のとおりです。

  1. 負荷ごとの設備容量に需要率をかけ、各負荷の最大需要電力を求める。
  2. それらを合計し、不等率で割って合成最大需要電力を求める。
  3. この合成最大需要電力をもとに、変圧器容量・幹線サイズ・契約電力を決める。

需要率で「同時に全部は使わない」ぶんを、不等率で「ピークがずれる」ぶんを差し引くことで、設備容量をそのまま使うより現実的で小さな容量にできます。これが過大な設備を避け、費用を抑えることにつながります。

計算例:受電容量を見積もる

電灯と動力の2つの負荷群がある建物を例に、合成最大需要電力を求めてみます。

負荷群設備容量需要率最大需要電力
電灯50キロワット70パーセント35キロワット
動力80キロワット60パーセント48キロワット
合計130キロワット-83キロワット

各負荷群の最大需要電力の合計は 35 + 48 = 83キロワットです。ここで2つのピークがずれていて不等率が1.2だとすると、合成最大需要電力は 83 ÷ 1.2 = 約69キロワットになります。設備容量の合計130キロワットに対し、実際に備えるべき容量は約69キロワットまで下がりました。変圧器はこの値に力率や将来の余裕を見込んで選定します(変圧器の容量はキロボルトアンペアで表すため、力率を考慮して換算します)。

設計での活用(実務)

実務では、これらの指標を使って受電設備や幹線を適切なサイズに落とし込みます。ポイントは次のとおりです。

  • 変圧器・受電容量の算定:合成最大需要電力をもとに、余裕を見て変圧器容量や受電設備を選びます。
  • 幹線サイズの検討:算定した最大需要電力から幹線に流れる電流を求め、許容電流や電圧降下とあわせてサイズを決めます。
  • 契約電力の見積り:需要のピークは電力の契約や基本料金に関わるため、需要率や負荷率の把握が役立ちます。
  • 目安値の扱い:用途別の需要率や不等率の目安は、内線規程や設計資料、過去の実績値を参照します。数値は建物の用途や運用で変わるため、根拠を確認して用います。

ここで注意したいのが、余裕(将来増設)の見込み方です。需要率や不等率で容量を小さく見積もりすぎると、機器の増設や運用の変化に対応できなくなります。逆に余裕を取りすぎると設備が過大になり、初期費用も基本料金もかさみます。実績値や用途の傾向をふまえ、現実的な最大需要に適切な余裕を上乗せする、というバランスが設計の腕の見せどころです。

また、需要率や不等率は建物の用途や規模によって傾向が変わります。一般に、多数の機器をまとめるほど同時には使われにくくなり、需要率は下がり不等率は大きくなる傾向があります。こうした傾向を、内線規程の資料値や過去の同種建物の実績とつき合わせて判断します。

負荷容量計算は、電圧降下や電線の許容電流とあわせて、電気設備の骨格を決める基礎です。指標の意味を理解しておくと、なぜその変圧器容量なのか、なぜその幹線サイズなのかを筋道立てて説明できるようになります。

まとめ:3つの指標の基礎

  • 設備容量をそのまま足すと過大になるため、実際の需要を見積もる指標が需要率・負荷率・不等率。
  • 需要率 = 最大需要電力 ÷ 設備容量。同時に全部は使わないぶんを表す。
  • 負荷率 = 平均需要電力 ÷ 最大需要電力。使い方の効率(平準化)を表す。
  • 不等率 = 個々の最大の合計 ÷ 合成最大需要電力。ピークのずれを表し、必ず1以上。
  • 合成最大需要電力 = (設備容量 × 需要率)の合計 ÷ 不等率 で見積もる。
  • この値をもとに変圧器容量・幹線サイズ・契約電力を決める。目安値は資料や実績で確認。

おさらいクイズ

この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。

  1. 需要率が通常100パーセント未満なのはなぜ?

    • 計算ミスだから
    • すべての機器が同時に定格いっぱいで動くことはまずないから
    • 法律の決まりだから

    正解は2番目。実際の最大需要電力は設備容量より小さくなります。

  2. 複数の負荷のピークが重ならないため、必ず1以上になる指標は?

    • 不等率
    • 需要率
    • 負荷率

    正解は不等率。各負荷の最大を足した値より、全体を合わせた最大のほうが小さくなります。

  3. これらの指標は主に何を決めるために使う?

    • 照明の色
    • 部屋の広さ
    • 変圧器容量・受電設備・幹線サイズ・契約電力

    正解は3番目。過大な設備を避け、費用を抑えられます。

よくある質問

需要率はなぜ100パーセントより小さいのですか

建物のすべての機器が、同時に、しかも定格いっぱいで動くことはまずないからです。実際の最大需要電力は設備容量より小さくなるため、その割合である需要率は通常100パーセント未満になります。

負荷率は高いほうがよいのですか

設備を効率よく使うという意味では、負荷率は高いほうが望ましいです。負荷率が低いと、短いピークのために大きな設備を用意することになり、設備が遊びやすくなります。ピークを平準化すると負荷率が上がります。

不等率が1以上になるのはなぜですか

複数の負荷のピークが同じ時間に重ならないためです。各負荷の最大を単純に足した値より、全体を合わせたときの最大のほうが小さくなるので、その比である不等率は必ず1以上になります。

これらの指標は何を決めるために使いますか

主に変圧器容量・受電設備・幹線サイズ・契約電力を決めるために使います。設備容量をそのまま使うより現実的な最大需要電力を見積もることで、過大な設備を避け、費用を抑えられます。