電気設備の資料を開くと、平面に記号が並んだ図、機器が線でつながった図、盤の中身を描いた図……と、何種類もの図面が出てきて戸惑うことがあります。じつは電気設備の図面は、それぞれ「見せたいこと」が違うため、目的別に分かれているのです。この記事では、電気を学びはじめた方に向けて、代表的な電気設備図面の種類と、それぞれ何を表し、どう使い分けるのかを、図解と一覧表でやさしく解説します。図面全体の“地図”が頭に入ります。

電気設備図面はなぜ何種類もある?

結論から言うと、1枚の図面にすべてを詰め込むと複雑になりすぎて読めないため、目的ごとに図面を分けているのです。「どこに設置するか」を見たい図、「電気がどうつながるか」を見たい図、「盤の中はどうなっているか」を見たい図。それぞれ役割が違います。

料理にたとえるなら、材料の置き場所を示す図、調理の流れを示す図、盛り付けの詳細を示す図が別々にあるようなもの。目的に合った図面を選んで見ることで、必要な情報にすばやくたどり着けます。まずは登場回数の多い「配線図(平面図)」と「系統図」の違いから押さえましょう。なお、これらの図面はすべて、共通の「配線用図記号」というシンボルで機器を表します。記号の意味がわかると、どの図面もぐっと読みやすくなるため、図面の種類とあわせて記号の基本も押さえておくと効果的です。

配線図(平面図)― どこに何があるか

配線図は、建物の平面図(間取り図)の上に、照明・スイッチ・コンセントなどの位置を記号で描いた図面です。屋内配線図、電気設備図とも呼ばれます。「この部屋の、この場所に、この器具を付ける」という設置場所を示すのが役割です。

「配線図」と「系統図」は役割が違う配線図(平面図)照明SWコンセント部屋の「どこに何があるか」系統図受電分電盤回路1回路2電気が「どうつながるか」

配線図では、器具は配線用図記号(○は照明、●はスイッチ、といったシンボル)で表されます。実際の工事や、部屋のどこにコンセントがあるかを確認するときに使う、もっとも身近な図面です。間取り図の上に情報が重ねて描かれているため、電気にくわしくない人でも比較的イメージしやすいのが特長です。いっぽう右側の系統図は、器具の位置ではなく「電気がどこから来て、どの順でつながるか」という流れを示します。同じ電気設備でも、見たい情報によって使う図面が変わるのです。

アッシュくんメモ:「平面図はどこに(位置)」「系統図はどうつながる(流れ)」。この2つの役割の違いさえ分かれば、電気図面はぐっと読みやすくなるよ。まずはこの2枚を見分けられるようになろう!

系統図 ― 電気の流れ・全体構成

系統図は、受電から各分電盤、各回路までの電気の流れ(系統)と全体構成を示す図面です。どこから電気を受け、どの盤を通って、どの回路へ配られるかを1枚で見渡せます。

建物全体で電気がどう配られているかを把握したいときや、増設・トラブル対応でどの盤・どの回路をたどればよいかを考えるときに役立ちます。系統図には、幹線の系統を示す「幹線系統図」や、コンセント回路のつながりを示す「回路系統図」など、対象を絞ったものもあります。系統図には各機器の容量(変圧器のkVAやブレーカーのAなど)が書き添えられることも多く、「どこにどれだけの電気が流れるか」まで読み取れます。建物全体の電気の“見取り図”として、まず最初に確認したい図面です。

単線結線図・複線図 ― 機器の接続

受変電設備(キュービクル)など、機器どうしの接続を示すのが結線図です。複数ある電線を1本に省略して全体構成を示すのが「単線結線図」、実際の配線本数どおりに詳しく描くのが「複線図」です。単線結線図は電気設備の“骨組み”を示す重要な図面で、受変電の設計では欠かせません。

単線結線図の詳しい読み方は、別の記事でくわしく解説しています。ここでは「機器の接続関係を示す図=結線図、概要が単線・詳細が複線」と覚えておけば十分です。

その他の図面 ― シーケンス図・姿図など

用途によっては、次のような図面も使われます。

  • シーケンス図(展開接続図):ポンプや空調など、機器が動く順序・制御の流れを示す図
  • 姿図(すがたず)・外形図:盤や機器の外観・寸法を示す図
  • 機器表・器具表:使う機器や器具の一覧を、容量・数量とともにまとめた表

これらは、制御の設計や、盤の製作、機器の発注といった場面で使われます。初心者のうちはすべてを覚える必要はなく、「制御の流れならシーケンス図、見た目や寸法なら姿図、一覧なら機器表」と、必要になったときに使い分けられれば十分です。図面の種類は分野(電灯・動力・弱電・防災など)ごとに分けて作られることも多く、大きな建物になるほど図面の枚数も増えていきます。それでも「どの図面が何を示すか」という役割さえ分かっていれば、必要な1枚を選び出せます。

図面を読む順番 ― 全体から細部へ

複数の図面があるときは、大きい情報から小さい情報へ、順にたどるのがコツです。

図面は「全体→位置→細部」の順に読む① 系統図全体のつながり② 配線図(平面図)どこに何があるか③ 結線図・詳細図機器の接続・細部

まず系統図で「電気がどこから来て、どうつながっているか」という全体像をつかみ、次に配線図(平面図)で「どの部屋の、どこに何があるか」という位置を確認し、最後に結線図・詳細図で「機器の細かい接続」を見ていきます。全体から細部へと視点を絞っていくと、たくさんの図面があっても迷いません。

図面は誰が・いつ使う?

電気設備図面は、建物ができるまでの各段階で、立場の違う人がそれぞれの目的で使います。

  • 設計の段階:設計者が、必要な電気設備を計画し、系統図や配線図として図面に落とし込む
  • 工事の段階:施工者が、配線図や結線図を見ながら、器具の設置や配線を行う
  • 完成後:実際にできあがった状態を反映した「竣工図(しゅんこうず)」として保管し、点検・修理・増設のときに参照する

とくに竣工図は、後から「どこにどんな配線が通っているか」を知る手がかりになる大切な資料です。図面は一度きりのものではなく、建物が使われ続けるかぎり、長く活用されていきます。だからこそ、目的ごとに整理された分かりやすい図面が求められるのです。

まとめ:目的で図面を使い分ける

電気設備図面の種類と役割を、表で整理します。

図面の種類何を表すか
配線図(平面図)どの部屋の、どこに、どんな器具を設置するか
系統図受電から各回路までの電気の流れ・全体構成
単線結線図機器の接続を1本の線で示した全体図
複線図実際の配線本数どおりに描いた詳細図
シーケンス図機器の制御・動作の順序
姿図・機器表機器の外観・寸法や、機器の一覧

電気設備の図面は、それぞれ役割が決まっています。「今、何を知りたいのか」をはっきりさせて、その情報が載っている図面を選ぶ。これができれば、初めての現場や資料でも、必要な情報にすばやくたどり着けます。まずは配線図と系統図の違いから、実際の図面で見分けてみてください。

よくある質問

配線図と系統図は何が違うのですか?

配線図(平面図)は「どの部屋のどこに何があるか」という設置場所を示し、系統図は「電気がどこから来て、どうつながるか」という流れ・全体構成を示します。位置を見るなら配線図、つながりを見るなら系統図、と使い分けます。

初心者はどの図面から見ればよいですか?

まず系統図で全体の流れをつかみ、次に配線図(平面図)で器具の位置を確認するのがおすすめです。全体から細部へと視点を絞っていくと、複数の図面があっても混乱しにくくなります。

単線結線図と系統図は同じものですか?

近い役割ですが、単線結線図は機器の接続を1本の線で示すことに重点があり、系統図は受電から各回路までの配線ルート・全体構成を示すことに重点があります。実務では重なる部分もあり、あわせて使われます。

シーケンス図はどんなときに使いますか?

ポンプや空調、自動制御など、機器が「どんな順序で動くか」を設計・確認するときに使います。制御の流れを表す図なので、電灯やコンセントの位置を示す配線図とは目的が異なります。

これらの図面はすべて覚える必要がありますか?

いいえ。まずは配線図(平面図)と系統図の違いを押さえれば十分です。ほかの図面は「制御ならシーケンス図」「一覧なら機器表」というように、必要になったときに役割を思い出せれば実務でも困りません。