「電線が長いと末端の電圧が下がる」。電気設備設計でよく聞く電圧降下ですが、なぜ起きるのか、どこまで許されるのか、どう計算するのかを整理できていますか。電圧降下は電線サイズの選定に直結する、実務で避けて通れないテーマです。
この記事では、電圧降下の仕組みから、単相2線式・三相3線式などの計算式、内線規程で目安とされる許容値、そして電圧降下を抑える方法までを、計算例を交えて初心者にも分かるように解説します。
電圧降下とは
電圧降下とは、電線に電流が流れることで、電源側から負荷側へ向かうにつれて電圧が下がる現象のことです。たとえば分電盤で100ボルトあっても、長い電線の先にある機器では95ボルトしかない、といったことが起こります。この下がった分が電圧降下です。
電圧が下がりすぎると、照明が暗くなる、モーターの起動が不安定になる、電子機器が正しく動かないといった不具合につながります。だからこそ、末端の機器がきちんと働く電圧を保てるよう、設計の段階で電圧降下を計算し、許容範囲に収める必要があります。
100V
95V
アッシュくんメモ:電圧降下は「電気が電線を通るときに払う通行料」みたいなもの。道(電線)が長くて細いほど、たくさん取られて末端に届く電圧が減っちゃうんだ。
電圧降下が起きる理由
電線には、細いながらも電気抵抗があります。オームの法則(電圧=電流×抵抗)のとおり、抵抗のある電線に電流が流れれば、その分だけ電圧が消費されます。これが電圧降下の正体です。
電圧降下の大きさは、主に次の3つで決まります。
- 電線のこう長(長さ):長いほど抵抗が増え、電圧降下は大きくなります。
- 流れる電流:電流が大きいほど、電圧降下は大きくなります。
- 電線の断面積(太さ):太いほど抵抗が減り、電圧降下は小さくなります。
電流は電線の行きと帰りの両方に流れるため、電圧降下も往復分で考えます。後で紹介する計算式の係数には、この往復分や銅の抵抗が織り込まれています。
なお交流では、電線の抵抗だけでなくリアクタンスという成分も電圧降下に関わります。ただし一般的な建物の低圧配線では、リアクタンスの影響は小さいため、抵抗を中心にした簡易式で実務上は十分とされています。長距離の高圧幹線などでは、より詳しい計算を行います。
電圧降下の計算式
実務では、配線方式ごとに決まった簡易計算式を使います。銅線を前提とした代表的な式は次のとおりです。
| 配線方式 | 電圧降下 e の式 |
|---|---|
| 単相2線式 | e = 35.6 × L × I ÷ (1000 × A) |
| 三相3線式 | e = 30.8 × L × I ÷ (1000 × A) |
| 単相3線式・三相4線式 | e = 17.8 × L × I ÷ (1000 × A) |
記号の意味は次のとおりです。
- e:電圧降下(ボルト)
- L:電線のこう長(メートル)
- I:流れる電流(アンペア)
- A:電線の断面積(平方ミリメートル)
計算例で確かめる
単相2線式100ボルト、こう長30メートル、電流20アンペアの回路を考えます。断面積5.5平方ミリメートルの電線を使うと、電圧降下は次のようになります。
e = 35.6 × 30 × 20 ÷ (1000 × 5.5)= 約3.9ボルト
100ボルトに対して3.9ボルト、つまり約3.9パーセントの降下です。後述する目安の2パーセントを超えてしまいます。そこで電線を14平方ミリメートルに太くすると、e = 35.6 × 30 × 20 ÷ (1000 × 14)= 約1.5ボルト(約1.5パーセント)となり、目安に収まります。このように、計算結果を見ながら電線サイズを決めていきます。
パーセント表示は、電圧降下を公称電圧で割った割合です。電圧降下率 = e ÷ 公称電圧 × 100 で求めます。同じ2ボルトの降下でも、100ボルト回路なら2パーセント、200ボルト回路なら1パーセントとなり、電圧が高いほど割合が小さくなる点も、電圧を上げる対策が効く理由です。
三相3線式でも考え方は同じで、係数だけ30.8に変えます。たとえば三相3線式200ボルト、こう長40メートル、電流30アンペア、断面積8平方ミリメートルなら、e = 30.8 × 40 × 30 ÷ (1000 × 8)= 約4.6ボルト、200ボルトに対して約2.3パーセントとなります。
許容される電圧降下の目安
電圧降下をどこまで許すかは、内線規程で目安が示されています。照明や機器には正常に動く電圧の範囲があり、末端でその範囲を下回らないようにするため、電源からの合計の降下に上限を設けるという考え方です。代表的な目安は次のとおりです。
| 区分 | 電圧降下の目安 |
|---|---|
| 低圧受電の幹線 | 2パーセント以下 |
| 分岐回路 | 2パーセント以下 |
| 高圧受電の幹線 | 3パーセント以下 |
幹線と分岐回路は直列につながるため、合計の電圧降下が末端に効いてきます。そのため、幹線と分岐でそれぞれ目安内に収めつつ、全体としても過大にならないように配分します。なお、こう長がとても長い場合には、緩和された基準が認められることもあります。数値は改定されることがあるため、実際の設計では最新の内線規程や社内基準を必ず確認してください。
電圧降下を抑える方法
計算した電圧降下が目安を超える場合は、次のような対策で小さくします。
- 電線を太くする:断面積を大きくすると抵抗が減り、電圧降下が小さくなります。最も基本的な対策です。
- こう長を短くする:分電盤の位置を負荷に近づけるなど、配線ルートを見直します。
- 供給電圧を上げる:同じ電力なら電圧が高いほど電流が小さくなり、電圧降下も小さくなります。100ボルトを200ボルトにする、単相を三相にするなどの方法です。
- 負荷を分散する:1本の幹線に集中させず、系統を分けて1回路あたりの電流を下げます。
- 力率を改善する:モーターなど力率の低い負荷では、力率を上げると同じ電力でも流れる電流が減り、電圧降下を小さくできます。
中でも「電線を太くする」と「電圧を上げる」は効果が大きい対策です。長い距離に大きな電力を送る場合は、はじめから200ボルトや三相で計画すると、電線サイズを抑えられて経済的になることもあります。
設計の進め方(電線サイズ選定との関係)
電圧降下は、電線サイズを決める3つの条件のうちの1つです。電線は次の条件をすべて満たすサイズを選びます。
- 許容電流:その電線が安全に流せる電流以上を流さないこと。
- 電圧降下:末端の電圧が目安内に収まること。
- 機械的強度:施工や使用に耐える太さがあること。
短い回路では許容電流でサイズが決まることが多いですが、こう長が長くなると電圧降下のほうが厳しくなり、許容電流だけでは足りずに1サイズ2サイズ太くする、というケースがよくあります。つまり「電流的には細くてよいのに、電圧降下のせいで太くする」場面が出てくるわけです。電線の許容電流や種類とあわせて理解しておくと、サイズ選定の判断がぶれません。
まとめ:電圧降下の基礎
- 電圧降下は、電線の抵抗と電流によって末端の電圧が下がる現象。
- 大きさはこう長・電流・断面積で決まり、長く細く電流が大きいほど大きくなる。
- 計算は配線方式ごとの簡易式(単相2線35.6・三相3線30.8・単相3線と三相4線17.8)を使う。
- 許容の目安は内線規程で、低圧幹線と分岐は2パーセント以下、高圧受電の幹線は3パーセント以下。
- 対策は電線を太く、こう長を短く、電圧を上げる、負荷を分散する。
- 電線サイズは許容電流・電圧降下・機械的強度の3条件で決める。長距離では電圧降下が効く。
おさらいクイズ
この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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電圧降下を小さくする、いちばん簡単な方法は?
- 電線を細くする
- 距離を伸ばす
- 電線を太くする
正解は電線を太くする。断面積を大きくすると抵抗が下がります。
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内線規程の目安で、低圧受電の幹線と分岐回路の電圧降下は?
- それぞれ2パーセント以下
- 10パーセント以下
- 20パーセント以下
正解はそれぞれ2パーセント以下。高圧受電の幹線は3パーセント以下が目安です。
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電線サイズは許容電流だけで決まる?
- 許容電流だけでよい
- 電圧降下と機械的強度も満たす必要がある
- 色で決まる
正解は2番目。こう長が長い回路では電圧降下で電線を太くすることがよくあります。
よくある質問
電圧降下は何パーセントまで許されますか
内線規程の目安では、低圧受電の幹線と分岐回路はそれぞれ2パーセント以下、高圧受電の幹線は3パーセント以下です。こう長が長い場合の緩和もあるため、最新の内線規程や社内基準で確認してください。
電圧降下の計算式の35.6などの数字は何ですか
銅線の抵抗と、電流が行き帰りする往復分などを織り込んだ係数です。単相2線式は35.6、三相3線式は30.8、単相3線式と三相4線式は17.8を使います。配線方式によって係数が違う点に注意します。
電圧降下を小さくする一番簡単な方法は何ですか
電線を太くすることです。断面積を大きくすると抵抗が下がり、電圧降下も小さくなります。距離が長く電力も大きい場合は、あわせて供給電圧を上げる(200ボルト化や三相化)と効果的です。
許容電流を満たせば電線サイズはそれで決まりですか
いいえ。許容電流に加えて電圧降下と機械的強度も満たす必要があります。特にこう長が長い回路では、許容電流では足りていても電圧降下が目安を超え、電線を太くしなければならないことがよくあります。
