「避雷針があるから雷は大丈夫」と思っていませんか。実は避雷針が守るのは建物そのもので、パソコンや制御機器などの電子機器は、別のしくみで守る必要があります。その主役が、雷サージから機器を守るSPD(避雷器)です。

この記事では、雷サージとは何か、直撃雷と誘導雷の違い、建物を守る外部保護と機器を守る内部保護、そしてSPDの役割やクラス、等電位ボンディングまでを、初めての方にも分かるように図解で解説します。

雷サージとは

雷サージとは、雷によって電線や通信線などに瞬間的に発生する、非常に大きな過電圧・過電流のことです。ほんの一瞬ですが、そのエネルギーは大きく、電子機器の内部を焼き切って故障させたり、データを失わせたりします。

雷サージは、発生のしかたで直撃雷と誘導雷に分けられます。

種類発生のしかた特徴
直撃雷建物や設備に雷が直接落ちるエネルギーが極めて大きく、破壊的
誘導雷近くへの落雷で、電磁界の急変により電線などにサージが誘導される直撃でなくても広範囲に及び、機器被害の多くを占める

意外に思われるかもしれませんが、電子機器の雷被害の多くは、直撃雷ではなく誘導雷によるものです。近くに落ちた雷が、電源線や通信線を通じて建物内に侵入し、機器を壊します。だからこそ、避雷針とは別に、機器を守る対策が必要になるのです。

アッシュくんメモ:避雷針は「建物に落ちた雷を地面へ逃がす人」。でも、近所に落ちた雷が電線づたいに忍び込んでくる誘導雷は防げない。その忍び込みを止めるのがSPDの役目なんだ。

外部雷保護と内部雷保護の違い

雷対策は、大きく外部雷保護と内部雷保護に分かれます。役割がはっきり違うので、セットで理解しましょう。

区分守る対象主な構成
外部雷保護建物そのもの(火災や損傷を防ぐ)受雷部(避雷針)・引下げ導線・接地
内部雷保護建物内の電子機器(サージから守る)SPD(避雷器)・等電位ボンディング

外部雷保護は、避雷針で雷を受け止め、引下げ導線を通じて安全に大地へ流し、建物への直撃による火災や損傷を防ぐしくみです。一方、内部雷保護は、電線などから侵入してくる雷サージによる電位差から、建物内の電気・電子機器を守るしくみです。避雷針だけでは内部の機器は守れないため、内部雷保護を組み合わせることが大切です。逆に、内部雷保護だけを施しても、建物への直撃で火災などが起きては元も子もありません。外部と内部の両方がそろって、はじめて建物と機器の両方を守れる、と理解しておきましょう。

SPD(避雷器)とは

SPDは、サージ防護デバイス(避雷器)とも呼ばれ、侵入してきた雷サージを安全に逃がし、過電圧・過電流が機器に届くのを防ぐ装置です。ふだんは何もしませんが、大きなサージが来た瞬間だけ電流を接地側へ流し、機器にかかる電圧を安全な範囲まで下げます。

SPDは、電源線に設けるものだけでなく、電話やLANなどの通信線に設けるものもあります。雷サージは電源からも通信線からも侵入するため、守りたい経路のそれぞれにSPDを設けることが重要です。

SPDのクラス(設置する場所)

SPDは、想定するサージの大きさと設置場所によってクラスが分かれています。建物の入口から機器の近くへと、段階的に配置してサージを減衰させるのが基本です。

クラス主な設置場所想定するサージ
クラスⅠ受電点・主分電盤直撃雷に伴う大きなサージ
クラスⅡ分電盤・制御盤誘導雷や、クラスⅠで下げたあとのサージ

建物の入口に近い受電点や主分電盤には、直撃雷に伴う大きなサージに耐えるクラスⅠを設けます。その先の分電盤や制御盤には、誘導雷や、クラスⅠで小さくなったあとのサージを処理するクラスⅡを設けます。このように多段で設けることで、機器に届くころにはサージが十分に小さくなっている、という守り方をします。守りたい機器のすぐ近くにさらに設ける場合もあります。

等電位ボンディングと雷保護ゾーン

SPDと並んで内部雷保護の要になるのが、等電位ボンディングです。これは、離れた金属部分や接地どうしを導体やSPDでつなぎ、雷が流れたときに生じる電位差をできるだけ小さくする考え方です。

雷サージによる機器の破損は、機器の間に大きな電位差が生じ、その差によって絶縁が破壊されることで起こります。そこで、各部分の電位を均一に近づけておけば、電位差による破壊を防げます。等電位ボンディングは、この「電位差をつくらない」ための対策です。

さらに大きな考え方として、建物内を雷の影響度合いで区域(雷保護ゾーン)に分け、区域の境目ごとにSPDなどの対策を施す方法があります。外から内へ入るたびにサージを減らしていく、という段階的な守りで、SPDのクラス分けもこの考え方に沿っています。

SPDは消耗品:寿命と点検

見落とされがちですが、SPDは一度付ければ永久に効くものではありません。大きなサージを何度も逃がすうちに内部が少しずつ傷み、やがて保護できなくなる消耗品です。劣化に気づかず放置すると、いざというときにサージを逃がせず、機器を守れないことになります。

そのため、多くのSPDには劣化を知らせる状態表示の窓や信号が備わっています。表示が「要交換」を示したら、サージが来る前に交換します。とくに雷の多い地域や、落雷を受けやすい環境では劣化が早まるため、定期的な点検と、必要に応じた交換が欠かせません。SPDを設けたら終わりではなく、状態を見ながら使い続けることが、確実な雷対策につながります。

設計・実務ポイント

雷サージ対策を踏まえた設計では、次のような点を検討します。

  • 誘導雷対策を重視する:機器被害の多くは誘導雷です。とくに通信・制御・情報システムの多い建物では、電源と通信の両方の経路にSPDを計画します。
  • 多段でのSPD配置:受電点のクラスⅠ、分電盤のクラスⅡというように、段階的に配置してサージを減衰させます。
  • 接地と等電位化:SPDは接地とセットで働きます。接地を確実にとり、等電位ボンディングで電位差を抑えます。
  • 外部保護との連携:避雷針などの外部雷保護と、SPDなどの内部雷保護を一体で計画します。片方だけでは不十分です。
  • 規格への適合:雷保護は日本産業規格(JIS)などの基準に沿って設計します。最新の規格を確認して進めます。

雷は避けられない自然現象ですが、被害は設計で大きく減らせます。建物を守る外部保護と、機器を守る内部保護を組み合わせ、とくに見落とされがちな誘導雷への備えを織り込むことが、安定した設備につながります。

まとめ:雷サージとSPDの基礎

  • 雷サージは雷による瞬間的な過電圧・過電流で、電子機器を故障させる。
  • 直撃雷と誘導雷があり、機器被害の多くは近くへの落雷による誘導雷。
  • 外部雷保護は建物を守り(避雷針など)、内部雷保護は機器を守る(SPDなど)。
  • SPDはサージを安全に逃がして機器を守る装置で、電源にも通信線にも設ける。
  • SPDはクラスⅠ(受電点)・クラスⅡ(分電盤)などを多段で配置して減衰させる。
  • 等電位ボンディングで電位差を抑え、雷保護ゾーンの考え方で段階的に守る。

おさらいクイズ

この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。

  1. 電子機器の被害で多くを占めるのはどちら?

    • 直撃雷
    • 誘導雷
    • 停電

    正解は誘導雷。近くへの落雷で電線などに誘導され、広範囲に及びます。

  2. 避雷針があればSPDは不要?

    • 別に必要(誘導雷サージは避雷針では防げない)
    • 不要になる
    • SPDが避雷針の代わりになる

    正解は必要。機器を守るにはSPDによる内部雷保護が別に要ります。

  3. SPDについて正しいのはどれ?

    • 一生交換不要
    • 発電もする
    • サージを逃がすたびに劣化する消耗品で、交換が必要

    正解は3番目。状態表示が交換を示したら早めに交換します。

よくある質問

避雷針があればSPDは不要ですか

いいえ。避雷針は建物への直撃雷を大地へ逃がし、建物を守るものです。電線などから侵入する誘導雷サージは避雷針では防げず、電子機器の被害の多くはこの誘導雷によります。機器を守るには、SPDによる内部雷保護が別に必要です。

直撃雷と誘導雷はどちらが被害が多いですか

電子機器の被害では、誘導雷によるものが多くを占めます。直撃雷はエネルギーが極めて大きいものの、頻度は限られます。一方、近くへの落雷で電線などに誘導される誘導雷は広範囲に及び、機器の故障原因として無視できません。

SPDはどこに設置しますか

建物の受電点や主分電盤にクラスⅠを、その先の分電盤や制御盤にクラスⅡを、というように段階的に設けます。守りたい機器の近くにさらに設けることもあります。電源だけでなく、通信線の経路にも設けるのが効果的です。

等電位ボンディングとは何ですか

離れた金属部分や接地どうしを導体やSPDでつなぎ、雷が流れたときの電位差を小さくする対策です。機器間に大きな電位差ができると絶縁が破壊されるため、電位を均一に近づけて破壊を防ぎます。内部雷保護の重要な柱のひとつです。

SPDは交換が必要ですか

はい。SPDはサージを逃がすたびに少しずつ劣化する消耗品で、いずれ保護できなくなります。多くの製品には劣化を示す状態表示があり、交換の目安になります。雷の多い地域では劣化も早まるため、定期的に点検し、表示が交換を示したら早めに交換することが大切です。