電気の図面には、よく似た名前がいくつも登場します。配線図、結線図、回路図。どれも「線をつなぐ図」に見えるのに、現場では使い分けられています。図面をもらったとき、自分が何を確かめたいのかによって、開くべき一枚が変わるのです。
今回はアッシュくんが、電気にくわしいのりめぇる先生に、3つの図面の違いを整理してもらいます。判断の軸はたったひとつ、「その図面は何の問いに答えるために描かれたか」です。
3つの図面が答えている問いは別々
のりめぇる先生、配線図と結線図と回路図って、全部同じものを呼び方を変えてるだけじゃないの?
まったく別の図面だよ。それぞれが答えている問いが違うんだ。
配線図が答えるのは「どこに電線を通すか」。建物の平面の上に、照明やコンセント、盤の位置を描いて、その間を結ぶ配線ルートを示す。工事の人がこれを見て現場で電線を通していく、道案内の図面だ。
結線図が答えるのは「どの端子とどの端子をつなぐか」。盤の中や機器の内部で、1本ずつの電線がどこに接続されるかを示す。組み立てと点検のための図面だね。
そして回路図が答えるのは「電気がどう働くか」。部品の記号と接続を、位置とは無関係に理屈だけで描く。押しボタンを押したらどう動くか、という動作の筋書きを表す図面だ。
道案内、組み立て説明書、動作の筋書き。同じ電線の話なのに、見たいものが全然違うんだね。
| 配線図 | 結線図 | 回路図 | |
|---|---|---|---|
| 答える問い | どこに通すか | どこにつなぐか | どう働くか |
| 下敷きになるもの | 建物の平面図 | 盤や機器の姿 | なし(理屈だけ) |
| 位置の正確さ | 必要 | 端子の並びは実物どおり | 不要 |
| 主に使う人 | 電気工事の施工者 | 盤の製作者・保守担当 | 設計者・制御の技術者 |
| たとえると | 道案内の地図 | 組み立て説明書 | 動作の筋書き |
配線図は「建物の上に描く」
配線図のいちばんの特徴は、建物の平面図を下敷きにしていることです。部屋の形の上に、照明の記号、コンセントの記号、スイッチの記号が置かれ、それらを線が結んでいきます。
- 器具の位置が実際の場所と対応する:図面の右奥に描かれたコンセントは、現場でも部屋の右奥に付きます
- 線には電線の本数や太さが添えられる:線の途中の斜線や傍記で、何本の電線が通るかを示します
- スイッチと照明の対応が読める:どのスイッチがどの照明を点けるかは、配線図で確かめます
記号と傍記の読み方は電気図面の記号の読み方入門、図面の種類全体の整理は電気設備図面の種類入門でくわしく解説しています。
アッシュくんメモ:見分け方はかんたん! 部屋の形が描いてあれば配線図、盤の中の端子がずらっと並んでいれば結線図、部屋も盤もなくて記号だけが並んでいれば回路図だよ。
結線図は「盤の中の1本ずつ」
結線図って、配線図があれば必要ないんじゃないの? どっちも線をつなぐ図なんだから。
縮尺が違いすぎるんだ。配線図は建物ぜんたいの縮尺で描くから、盤の中で電線が何番の端子に入るかまでは描けない。1つの四角に「分電盤」と書いてあるだけだ。
でも盤をつくる人や点検する人には、その四角の中身が必要になる。何番の端子に何色の電線をつなぐか、どのブレーカーがどの回路を受け持つか。それを1本ずつ描いたのが結線図だ。だから盤1つに対して結線図が1枚以上ある。
受変電設備の結線図には、有名な単線結線図がある。三相の3本の電線を1本の線で代表して描く省略の書き方で、大きな設備の全体像を1枚に収めるための工夫だよ。
単線結線図の読み方は単線結線図の読み方入門、盤の記号と傍記は分電盤の図面記号一覧をどうぞ。
回路図は「位置を捨てて理屈を取る」
回路図のおもしろさは、位置の情報を意図的に捨てているところです。実際には離れた場所にある部品でも、動作の説明に都合がよければ隣に描きます。
制御の回路図では、押しボタン、リレー、電磁接触器、ランプなどの記号が縦の線の間に並び、上から下へ動作の順番を追えるように描かれます。「このボタンを押すとリレーが働き、その接点が閉じてモーターが回り、同時に運転表示灯が点く」という筋書きが、そのまま図の形になっているのです。
だから回路図は、故障の原因を追うときに強い味方になります。動かない機械の前で「どこまで信号が届いているか」を確かめるとき、頼りになるのは位置の地図ではなく、動作の筋書きだからです。
系統図も加えると4枚で全体が見える
ここに系統図を加えると、電気図面の家族がそろいます。
- 系統図:建物全体のつながりの骨格。受変電から幹線、各盤へという大きな流れ
- 配線図:平面の上のルート。現場で電線を通すための道案内
- 結線図:盤や機器の中の1本ずつ。組み立てと点検のため
- 回路図:動作の理屈。制御の筋書きを追うため
俯瞰から細部へ、そして理屈へ。この4枚を行き来できるようになると、電気設備の図面は一気に読めるようになります。系統図の役割は系統図とはで解説しています。
3枚の図面は同じ工事の別の顔
ここまで違いを並べてきましたが、実務では3枚がひとつの工事を別の角度から語っています。たとえばオフィスに新しくエアコンを1台増やす場面を追ってみましょう。
- 系統図で容量を確かめる:その階の盤に空き回路と容量の余裕があるかを見ます。足りなければ幹線の話にまで戻ります
- 配線図でルートを決める:盤から新しいエアコンまで、どの経路で電線を通すか。天井裏を通せるか、他の設備とぶつからないかを平面で検討します
- 結線図で盤の中を決める:盤のどの位置にブレーカーを増設し、何番の端子につなぐか。回路表の番号も更新します
- 回路図で動作を確かめる:制御を伴う機器なら、運転や停止の信号がどう流れるかを追います
1台のエアコンを増やすだけでも、4枚の図面を行き来することになります。図面が分かれているのは面倒にするためではなく、それぞれの場面で必要な情報だけを迷わず取り出せるようにするためなのです。
図面がいっぱいあるのは分かりにくくするためじゃなくて、知りたいことにすぐ届くためだったんだね。名前で混乱してたけど、問いで選べばいいと分かって気が楽になったよ。
その通り。図面は「読む」ものというより「聞く」ものだと思ってほしい。自分の問いを持って開けば、図面はちゃんと答えてくれる。逆に問いがないまま見ていても、ただの線の海に見えるだけなんだ。次に図面を渡されたら、まず知りたいことを一文にしてから開いてみて。読める量が驚くほど変わるよ。
まとめ:問いが違うから図面が分かれる
- 配線図は「どこに通すか」。建物の平面を下敷きに、器具の位置と配線ルートを示す
- 結線図は「どこにつなぐか」。盤や機器の内部で、端子ごとの接続を1本ずつ示す
- 回路図は「どう働くか」。位置を捨てて、動作の理屈だけを描く
- 単線結線図は受変電設備の結線図。3本の電線を1本で代表して描く省略の書き方
- 系統図を加えた4枚で、俯瞰・ルート・細部・理屈がそろう
- 見分けるコツは、部屋の形があれば配線図、端子が並べば結線図、記号だけなら回路図
おさらいクイズ
のりめぇる先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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建物の平面図を下敷きにして描かれるのは?
- 配線図
- 結線図
- 回路図
正解は配線図。部屋の形の上に器具の記号と配線ルートを描き、現場で電線を通すための道案内になります。
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回路図の特徴として正しいのは?
- 器具の位置が実物と一致している
- 建物の縮尺で描かれる
- 位置の情報を捨てて、動作の理屈を表す
正解は3番。離れた部品でも説明に都合がよければ隣に描きます。故障の原因を追うときに強い味方になる図面です。
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単線結線図はどの図面の仲間?
- 配線図
- 結線図(受変電設備のもの)
- 回路図
正解は結線図の仲間。受変電設備のつながりを、三相3本の電線を1本で代表して描いた図面です。
よくある質問
「結線図」と「展開接続図」は違いますか?
展開接続図は、盤内の制御回路を動作の流れに沿って展開して描いた図面で、性格としては回路図に近い仲間です。同じ盤について、外形と端子の接続を示す結線図と、動作を示す展開接続図の両方が用意されることがあります。呼び方は会社や分野によって幅があるため、図面の中身を見て判断するのが確実です。
住宅の電気図面には、どれが含まれますか?
中心になるのは配線図です。平面図の上に照明・コンセント・スイッチと配線ルートが描かれ、分電盤の回路表が添えられます。制御の回路図まで用意されるのは、機械設備の制御を伴う建物や、産業用の設備がある場合です。
図面の呼び方が現場でバラバラなのはなぜですか?
分野ごとに慣習が違うためです。建築設備、産業機械、電子機器では、同じ「回路図」という言葉が指すものが微妙に違います。だからこそ図面には凡例が添えられます。初めて見る図面では、まず凡例と表題欄を確認するのが正しい入り方です。
どれから読めるようになればいいですか?
配線図からがおすすめです。部屋の形という手がかりがあるので、記号と実物の対応を目で確かめられます。次に盤の結線図で細部へ進み、制御に関わる段階で回路図に手を伸ばす。この順番が無理なく力になります。
図面をもらったのに、どれを見ればいいか分かりません。
自分の問いを言葉にしてみてください。「このコンセントはどの回路か」なら配線図と回路表、「盤の中のこの端子は何か」なら結線図、「なぜ機械が動かないのか」なら回路図。問いが決まれば、開くべき一枚は自然に決まります。
