太陽光発電の記事で、つくった電気をためて夜に使う「蓄電池」に触れました。停電への備えや電気代の節約の面から、住宅でもビルでも導入が広がっています。名前は知っていても、容量の見方や、停電時にどこまで使えるのかは、意外と分かりにくいものです。
この記事では、省エネ設計の視点から、蓄電池の基礎をやさしく整理します。蓄電池の役割、容量と出力の違い、できること、全負荷型と特定負荷型、そして選び方まで、初心者にも分かるように順番に解説します。
蓄電池とは(電気をためて使う設備)
蓄電池とは、電気をためておき、必要なときに取り出して使える設備です。建物に固定して設置するものを定置用蓄電池と呼びます。スマートフォンの充電池と原理は同じで、それを住宅やビル向けに大きくしたものと考えると分かりやすいでしょう。
家庭用では、リチウムイオンという種類の電池が主流です。軽くてたくさんの電気をためられ、寿命も長いという利点があります。蓄電池は、太陽光発電と組み合わせると特に力を発揮します。昼につくった電気の余りをためて、夜に使う。この流れで、電気を無駄なく生かせます。
なお、蓄電池は住宅だけのものではありません。オフィスビルや工場、店舗などでも、電気代のピークを抑えたり、非常時の電源を確保したりするために、より大きな産業用の蓄電池が導入されています。規模は違っても、電気をためて必要なときに使うという基本の考え方は同じです。
容量(kWh)と出力(kW)の違い
蓄電池を選ぶとき、まず押さえたいのが容量と出力という2つの数字です。似ているようで意味が違い、混同しやすいので整理しておきましょう。
- 容量(kWh):ためられる電気の量です。大きいほど、たくさんの電気を蓄えられ、長い時間使えます。家庭用ではおおむね4〜16kWh程度のものが多く見られます。
- 出力(kW):一度に取り出せる電気の力です。大きいほど、たくさんの家電を同時に動かせます。
水タンクにたとえると、容量はタンクの大きさ、出力は蛇口の太さです。タンクが大きくても蛇口が細ければ、一度にたくさんは使えません。逆に蛇口が太くても、タンクが小さければすぐ空になります。両方のバランスを見て選ぶことが大切です。
アッシュくんメモ:カタログで容量の数字だけを見て選びがちだけど、出力も大事なんだ。出力が小さいと、停電時にエアコンと電子レンジを同時に使えない、なんてことも。何を同時に動かしたいかをイメージして選ぼう。
蓄電池でできる3つのこと
蓄電池を導入すると、大きく3つのメリットが得られます。目的によって、重視するポイントが変わります。
- 電気代の節約:昼に太陽光でつくった電気の余りをため、夜に使えば、電力会社から買う電気を減らせます。電気料金の安い夜間にためて昼に使う、という使い方もあります。
- ピークカット:電気を多く使う時間帯に蓄電池から補うことで、ピーク時の使用量を抑えます。契約や電気料金の面で有利になることがあります。
- 停電時のバックアップ:災害や事故で停電しても、ためた電気で最低限の電気を使えます。自動で自立運転に切り替わるタイプなら、いざというとき安心です。
アッシュくんメモ:太陽光と蓄電池はいわば相棒なんだ。太陽光は昼しか発電できないけど、蓄電池があれば夜や停電時にもその電気を回せる。2つ合わせて初めて「つくって、ためて、使う」がそろうんだよ。
全負荷型と特定負荷型
停電したときにどこまで電気を使えるかは、蓄電池のタイプで変わります。大きく全負荷型と特定負荷型に分かれます。
| タイプ | 停電時に使える範囲 | 特徴 |
|---|---|---|
| 全負荷型 | 家全体(すべての部屋・回路) | ふだんに近い生活ができる。出力が大きめ |
| 特定負荷型 | あらかじめ決めた一部の回路のみ | 必要な場所に絞る。比較的手ごろ |
全負荷型は、停電時も家じゅうで電気を使えるので便利ですが、その分大きな出力と容量が必要になります。特定負荷型は、冷蔵庫やリビングの照明など、本当に必要な回路だけを停電時に使えるようにするタイプで、費用を抑えやすいのが利点です。停電のときに何を動かしたいかを考えて選びます。たとえば、医療機器を使う家庭や、在宅で仕事をする家では全負荷型が安心ですし、最低限の照明と冷蔵庫が使えればよいなら特定負荷型で十分なこともあります。
蓄電池の選び方と注意点
蓄電池は高価な買い物なので、いくつかのポイントを押さえて選びたいところです。
- 容量と出力のバランス:夜にどれくらい使うか、停電時に何を動かすかから、必要な容量と出力を見積もります。大きすぎても費用が無駄になります。
- 寿命(サイクル数):蓄電池は充放電をくり返すうちに少しずつ劣化します。何回くらい充放電できるか(サイクル数)が寿命の目安です。
- 効率:ためた電気をすべて使えるわけではなく、出し入れで少し失われます。往復効率はおおむね85〜95%程度とされます。
- 設置場所:蓄電池には大きさと重さがあり、屋外や屋内の決められた条件を満たす場所に置きます。温度など設置環境の制約もあります。
- 費用と補助金:初期費用は小さくありませんが、国や自治体の補助金が使える場合があります。条件は年度で変わるため、導入時に最新情報を確認します。
近年は、電気自動車(EV)を蓄電池として使うV2H(Vehicle to Home)というしくみも広がっています。EVの大きな電池を家庭の電源として活用でき、非常時の備えとしても注目されています。
太陽光と蓄電池を組み合わせる意味
蓄電池が特に力を発揮するのは、太陽光発電と組み合わせたときです。前回の太陽光の記事で触れた「自家消費」を、蓄電池が大きく後押しします。
太陽光だけの場合、昼につくった電気のうち使いきれない分は売電するしかありません。しかし売電価格は年々下がってきており、とくに、固定価格での買取期間が終わったあと(いわゆる卒FIT)は、売っても以前ほどの収入になりません。そこで蓄電池をあわせて持てば、昼の余りをためて夜に使えるようになり、売るより自分で使うほうが得、という形をつくれます。
- 昼:太陽光でつくった電気を使い、余りを蓄電池にためる。
- 夜:ためた電気を使い、足りない分だけ電力会社から買う。
- 停電時:太陽光で発電しながら蓄電池にため、夜も電気を使い続けられる。
このように、つくる(太陽光)とためる(蓄電池)がそろうことで、電気の自給自足に近づきます。ZEBやZEHでも、この組み合わせが省エネと創エネを支える中心的な役割を果たします。ただし両方を導入すると初期費用は大きくなるため、暮らし方や電気の使い方に合った容量を見きわめることが大切です。
まとめ:蓄電池の基礎を押さえる
- 蓄電池は電気をためて使う設備。家庭用はリチウムイオンが主流で、太陽光と好相性。
- 容量(kWh)はためられる量、出力(kW)は一度に出せる力。両方のバランスで選ぶ。
- できることは電気代の節約・ピークカット・停電時のバックアップの3つ。
- 停電時に家全体で使える全負荷型と、一部の回路に絞る特定負荷型がある。
- 容量・出力・寿命・効率・設置場所・費用を見て選ぶ。EVを使うV2Hも広がる。
- 太陽光とセットにすると「つくる・ためる・使う」がそろい、自給自足に近づく。
おさらいクイズ
この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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停電時に家全体で電気を使える蓄電池のタイプは?
- 全負荷型
- 特定負荷型
- 交流型
正解は全負荷型。特定負荷型はあらかじめ決めた一部の回路だけです。
-
蓄電池の寿命の目安になるのは?
- 設置した年月日
- 充放電をくり返せる回数(サイクル数)
- 本体の色
正解はサイクル数。年数を重ねるとためられる容量は少しずつ減ります。
-
蓄電池の容量は大きいほどよい?
- 常に大きいほどよい
- 小さいほどよい
- 必要量を見積もり過不足のないサイズがよい
正解は3番目。容量が大きいほど費用も上がります。
よくある質問
蓄電池だけでも導入する意味はありますか
あります。電気料金の安い時間帯にためて高い時間帯に使う、停電に備えるといった使い方ができます。ただし太陽光と組み合わせると、つくった電気をためて使えるため、効果はさらに高まります。目的が停電対策だけなのか、電気代の節約もねらうのかで、選ぶ容量や機種が変わってきます。
停電したら家中の電気が使えますか
タイプによります。全負荷型なら家全体で使えますが、特定負荷型はあらかじめ決めた一部の回路だけです。また、蓄電池の残量と出力の範囲内で使える点にも注意が必要です。
蓄電池はどのくらい長持ちしますか
充放電をくり返せる回数(サイクル数)が寿命の目安で、使い方や製品によって変わります。年数を重ねると、ためられる容量は少しずつ減っていきます。カタログのサイクル数や保証内容を確認しましょう。
容量は大きいほどよいのですか
必ずしもそうではありません。容量が大きいほど費用も上がります。夜の使用量や停電時に動かしたいものから、必要な容量を見積もり、過不足のないサイズを選ぶのが賢い選び方です。
