設備の図面を渡されて「まず系統図を見て」と言われたことはありませんか。平面図なら部屋の形が描かれていて直感的に分かるのに、系統図は線と四角が並ぶだけで、どこを見ればいいのか分からない。そんな戸惑いは、系統図の役割をひとことで理解すれば消えていきます。

今回はアッシュくんが、電気にくわしいのりめぇる先生に、系統図とは何を描いた図面なのかを教わります。キーワードは「電車の路線図」。この一点さえつかめば、電気も空調も給排水も、系統図はすべて同じ目で読めるようになります。

系統図は「つながり」の地図、平面図は「位置」の地図

アッシュくん

のりめぇる先生、系統図って何の図面なの? 平面図みたいに部屋が描かれていないから、どう見たらいいのか分からないんだ。

のりめぇる先生

系統図は「どこにあるか」を描く図面じゃないんだ。「何と何が、どんな順番でつながっているか」だけを描いた図面。だから部屋の形も、正確な距離も必要ない。

いちばん近いのは電車の路線図だよ。路線図に載っているのは、駅の並び順と乗り換えの関係だけ。実際の線路のカーブや駅間の距離は正確じゃないけれど、目的地までの道すじを知るにはあれで十分だよね。系統図もまったく同じ。設備のつながりだけを抜き出して、1枚で全体を見渡せるようにした図面なんだ。

アッシュくん

路線図か! たしかに路線図で駅の場所を測ろうとは思わないよね。系統図は「つながりを見る専用の図」なんだね。

この役割分担を表にすると、2つの図面の関係がすっきり見えてきます。

平面図系統図
描いているもの位置(どこにあるか)接続(どうつながっているか)
縮尺正確に必要基本的に持たない
たとえると地図電車の路線図
得意なこと器具の場所・ルートの確認全体像・容量・系統の把握
読む場面現場で物を取り付けるとき建物全体の計画を確かめるとき

つまり設計者は、系統図で「建物全体の骨格」を組み立て、平面図で「一つひとつの居場所」を決めていきます。どちらが上ということはなく、2枚をセットで見るからこそ設備の姿が立ち上がるのです。図面の種類ごとの役割は電気設備図面の種類入門でも整理しています。

電気の系統図:電気の流れを上から下へ追う

電気設備の系統図は、電気が建物に入ってきてから使われるまでの流れを、上から下へ一本道で描きます。代表的なものが幹線系統図です。

  • いちばん上:電力会社からの引込。受変電設備(キュービクル)や引込開閉器が描かれます
  • 真ん中:幹線。受変電から各階・各エリアの分電盤へ電気を届ける太い流れです。電線の太さ(サイズ)や長さ、ブレーカーの容量が線のそばに書き込まれます
  • いちばん下:分電盤や動力盤。ここから先の細かい回路は、盤ごとの結線図や平面図が受け持ちます

電気の幹線と分岐の関係は幹線と分岐回路とは入門で、盤の記号や傍記の読み方は分電盤の図面記号一覧でくわしく解説しています。

アッシュくんメモ:系統図を読むコツは「上から下へ、指でたどる」! 引込から始めて、幹線を通って、目当ての盤にたどり着く。この一本道をなぞるだけで、その盤がどこから電気をもらっているかが分かるんだ。

単線結線図は「受変電設備の系統図」

アッシュくん

そういえば単線結線図っていう図面もあるよね。系統図とは別のものなの?

のりめぇる先生

いいところに気づいたね。単線結線図は、系統図の仲間の中でもっとも有名な一枚。受変電設備のつながりを描いた系統図のことなんだ。

「単線」というのは、本当は3本ある電線を1本の線で代表して描くという書き方のこと。三相の電気は3本の線で送られるけれど、3本ぜんぶ描くと図が真っ黒になってしまう。だから1本にまとめて、そのかわり「3本ある」という情報は斜めの短い線や傍記で添える。省略して見やすくするための工夫だよ。

だから系統図と単線結線図は、対立するものじゃない。「系統図」という大きな家族の中に、受変電を担当する「単線結線図」がいる、という関係だね。

単線結線図の具体的な読み方は単線結線図の読み方入門で一つずつ解説しています。系統図の考え方を先に押さえておくと、あの複雑な一枚もぐっと読みやすくなります。

機械設備にも系統図がある:空調・給排水・ダクト

系統図は電気だけのものではありません。機械設備の世界にも、同じ発想の図面がそろっています。

  • 空調系統図:熱源機(冷凍機やボイラー)から、配管を通って各階の空調機やファンコイルへ、どう熱が配られるかを示します
  • 給排水衛生系統図:受水槽やポンプから、縦の配管(立て管)を通って各階の水まわりへ。排水は逆に、各階から下の排水管・通気管へと集まる流れを描きます
  • ダクト系統図:空調機から吹出口まで、空気の通り道と風量の分配を示します
  • 防災・弱電の系統図:火災報知設備や放送設備、LANの配線が、受信機や親機からどう枝分かれしているかを示します

建物を縦に切った断面のように描かれることが多いのも、機械設備の系統図の特徴です。上下階のつながりが一目で分かるため、「3階のトイレの水はどの立て管から来ているか」といった確認が一瞬でできます。機械設備の図面全体の見方は機械設備図面の見方入門でまとめています。

系統図を読むと分かる3つのこと

  1. 容量の妥当性:受変電の容量、幹線の太さ、ブレーカーの大きさが上流から下流へ矛盾なく並んでいるか。系統図はこの「容量の物語」を検算するための図面でもあります
  2. 系統の分け方:どの範囲を1つの盤や1つの空調機でまとめているか。テナントごと・階ごとの区切り方や、非常用電源につながる回路の区別も系統図に表れます
  3. 将来の増設余地:盤に空き回路があるか、幹線に余裕があるか。増床やレイアウト変更の相談は、まず系統図を見るところから始まります
アッシュくん

系統図って、線と四角ばっかりでとっつきにくいと思ってたけど、路線図だと思えば急に親しみがわいてきたよ。指でたどるの、やってみる!

のりめぇる先生

それが上達のいちばんの近道だよ。系統図は、設計者が建物の骨格をどう考えたかが1枚に凝縮された図面なんだ。どこで系統を分け、どこに余裕を残したか。指でたどっていくうちに、描いた人の判断まで読めるようになる。図面は無言だけれど、いちばん正直に設計の意図を語ってくれる相手なんだよ。

まとめ:系統図は建物設備の路線図

  • 系統図は「位置」ではなく「つながり」を描いた図面。縮尺は基本的に持たない
  • 平面図が地図なら、系統図は電車の路線図。2枚セットで設備の姿が分かる
  • 電気の幹線系統図は、引込から幹線、分電盤へと上から下へ電気の流れを追う
  • 単線結線図は受変電設備の系統図。3本の電線を1本で代表して描く省略の工夫
  • 空調・給排水・ダクト・防災にも系統図があり、上下階のつながりを断面のように示す
  • 読み取れるのは容量の妥当性・系統の分け方・将来の増設余地の3点

おさらいクイズ

のりめぇる先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。

  1. 系統図が主に描いているものは?

    • 器具の正確な位置と寸法
    • 設備が何とどうつながっているかの接続関係
    • 建物の外観デザイン

    正解は接続関係。位置や寸法は平面図の役目です。系統図は電車の路線図のように、つながりだけを抜き出して全体を見渡せるようにした図面です。

  2. 単線結線図と系統図の関係は?

    • まったく別の種類の図面
    • 単線結線図のほうが系統図を含む大きな概念
    • 単線結線図は受変電設備を描いた系統図の一種

    正解は3番。系統図という大きな家族の中に、受変電を担当する単線結線図がいる関係です。「単線」は3本の電線を1本で代表して描く書き方を指します。

  3. 系統図を読むときの基本の動作は?

    • 引込から下流へ、電気や水の流れを指でたどる
    • 縮尺を測って距離を計算する
    • 部屋の名前から探す

    正解は流れをたどること。上流の引込や熱源から始めて下流の盤や器具へ一本道をなぞれば、その設備がどこから供給を受けているかが分かります。

よくある質問

系統図と結線図、配線図はどう違うのですか?

目的が段階的に違います。系統図は建物全体のつながりの骨格、結線図は盤の中など特定の機器の内部の接続、配線図(平面図)は実際にどこへ電線を通すかというルートを示します。ざっくり言えば、系統図は俯瞰、結線図は拡大、配線図は現場の道案内です。

系統図に縮尺がないなら、電線の長さはどう分かるのですか?

線のそばに数値で書き込みます。系統図では図形の長さで距離を表すのではなく、「L=40m」のように文字情報として添えるのが決まりです。電圧降下の計算にはこの長さが必要になるため、実務ではとても重要な書き込みになります。電圧降下の考え方は電圧降下の基礎入門をどうぞ。

系統図はどのタイミングで作られるのですか?

設計のかなり早い段階で作られます。建物にどれだけの電気や水、熱が必要かを算定し、その骨格を決めるのが系統図だからです。平面図で器具の位置を詰める前に、まず全体の容量と系統を固める。この順番が逆になると、あとから「幹線が足りない」といった大きな手戻りが起きます。

建物のオーナーや管理者も系統図を読めたほうがいいですか?

読めると大きな武器になります。テナントの入れ替えで電気容量が足りるか、空調の系統をどう分けているか、増設の余地があるか。こうした相談の答えは、ほぼすべて系統図に書かれています。竣工図面のうち、系統図はまず最初に開くべき一枚です。

系統図の記号は図面ごとに違うのですか?

基本の図記号は日本産業規格(JIS)で共通化されていますが、実務では会社や案件ごとの凡例が図面に添えられます。初めて見る図面では、まず凡例を確認するのが正解です。JISの基本形と凡例の両方を押さえておけば、どの設計者が描いた系統図でも迷わず読み進められます。