大きなビルの屋上に、白い箱から湯気のようなものが立ちのぼっているのを見たことはないでしょうか。あれは冷却塔という設備で、建物全体の冷暖房を支える熱源機器の一部です。エアコンの記事では家庭用や小規模の空調を扱いましたが、大きな建物では少し違うしくみが使われています。

この記事では、機械設備シリーズの深掘り編として、熱源機器の基礎を整理します。ボイラーと冷凍機の役割、冷凍機の2つのタイプ、冷却塔のしくみ、そして中央熱源方式の考え方まで、初心者にも分かるように順番に解説します。空調・ポンプ・ダクトの記事とあわせて読むと、建物の冷暖房が1本の流れとしてつながって見えてくるはずです。

熱源機器とは(冷房と暖房のもとをつくる)

熱源機器とは、冷房のもとになる冷たい水(冷水)や、暖房のもとになる温かい水(温水)・蒸気をつくり出す設備です。つくった冷温水をポンプと配管で各階の空調機へ送り、空調機が空気を冷やしたり暖めたりして、ダクトで部屋へ届けます。熱源機器は、いわば建物の冷暖房の大もとです。

このように、機械室に熱源機器をまとめて置き、冷温水を建物じゅうに配る方式を中央熱源方式(セントラル方式)といいます。反対に、各部屋にエアコンの室外機を置くように、機器を分散して置くのが個別熱源方式です。大規模なビルやホテル、病院などでは中央熱源方式がよく使われます。

熱源機器がつくった冷温水を、離れた空調機まで運ぶ役割は、配管とポンプが担います。行き(往き)の管で冷温水を送り、戻り(還り)の管で回収してくり返し使う、という流れです。前回のポンプの記事で扱った循環ポンプは、まさにこの熱を運ぶ役目を果たしています。熱源・搬送・空調機は、それぞれが連携して初めて建物全体の空調が成り立ちます。

中央熱源方式の全体像冷却塔熱源機器冷凍機・ボイラー熱を捨てるポンプ冷温水空調機空気を冷暖するダクト部屋機械室の熱源機器で冷温水をつくり、ポンプ→空調機→ダクトの順で快適な空気を届ける(水を運ぶのがポンプと配管、空気を運ぶのがダクト)

ボイラー(温水や蒸気をつくる)

ボイラーは、燃料や電気で水を加熱し、温水や蒸気をつくる設備です。つくった温水は暖房に、蒸気は暖房のほか給湯や厨房、加湿などにも使われます。冬の暖かさや、お湯の供給を支える縁の下の力持ちです。

ボイラーには、温水をつくる温水ボイラーと、蒸気をつくる蒸気ボイラーがあります。高温高圧を扱うものは、安全のために有資格者による取り扱いや定期的な点検が法律で求められます。燃焼をともなう機器なので、燃料の供給や排気、安全装置の管理も重要です。近年は、排ガスの熱まで回収して効率を高めた省エネタイプのボイラーも増えています。

冷凍機(冷水をつくる)とその種類

冷凍機は、冷房のもとになる冷水をつくる設備で、チラーとも呼ばれます。エアコンと同じく、冷媒を使って熱を移動させるしくみですが、大きな建物向けに水を冷やす形になっているのが特徴です。エアコンの記事で学んだヒートポンプの原理が、規模を大きくして水を冷やす形で使われていると考えると分かりやすいでしょう。冷凍機には、大きく2つのタイプがあります。

項目ターボ冷凍機吸収式冷凍機
動かす力電気(遠心式の圧縮機を回す)おもに熱(ガスや蒸気)
冷媒フロン冷媒水を冷媒に使う
つくれるもの冷水(冷房向け)冷水と温水(冷暖房が可能)
電気の使用多い少ない

ターボ冷凍機は、遠心式の圧縮機を電気で高速回転させて冷水をつくる方式で、大容量のビル空調などで多く使われます。一方の吸収式冷凍機は、水を冷媒として使い、ガスや蒸気の熱で動くのが特徴です。電気をあまり使わず、1台で冷水も温水もつくれる(冷暖房できる)ため、電気の契約容量を抑えたい建物などで選ばれます。自然界の水を利用することから、ナチュラルチラーとも呼ばれます。

空冷式と水冷式、そして冷却塔

冷凍機は熱を移動させる機械なので、部屋から奪った熱を最終的にどこかへ捨てなければなりません。この捨てかたによって、空冷式と水冷式に分かれます。

  • 空冷式:外の空気に直接熱を捨てる方式。エアコンの室外機と同じ考え方で、冷却塔が要りません。設置が手軽ですが、大容量には向きにくい面があります。
  • 水冷式:冷却水に熱を移し、その冷却水を冷却塔で冷やして循環させる方式。大容量を効率よく冷やせるため、大きな建物で多く使われます。

水冷式に欠かせないのが冷却塔(クーリングタワー)です。冷凍機で熱を受け取って温まった冷却水を、冷却塔の上から散らし、通り抜ける空気に水の一部を蒸発させます。このとき奪われる気化熱(水が蒸発するときに周りから熱を奪う性質)で、残りの水が冷やされます。冷えた水はふたたび冷凍機へ戻され、くり返し使われます。屋上から湯気が上がって見えるのは、この蒸発によるものです。

冷却塔が熱を大気へ逃がすしくみ温かい冷却水を上から散らす空気が通り、水の一部が蒸発→ 気化熱で残りの水が冷える冷えた水がたまる冷凍機温かい水冷えた水冷えた水を冷凍機へ戻してくり返し使う

アッシュくんメモ:冷却塔は水を蒸発させて冷やすから、水がだんだん減っていくし、水質の管理も欠かせないんだ。レジオネラ菌などの対策として、定期的な清掃と点検がとても大切な設備だよ。

中央熱源方式のメリットとデメリット

熱源をまとめる中央熱源方式には、長所と短所があります。個別方式と比べて考えると、選びかたが見えてきます。

  • メリット:大型で効率のよい機器を使えて、建物全体で見ると省エネにしやすい。機械室に集約されるので、点検や更新をまとめて行いやすい。各部屋には大きな室外機が要らず、すっきりする。
  • デメリット:初期費用が大きく、機械室やダクト、配管のスペースが必要。使っていない部屋のためにも大もとを動かすと無駄が出やすい。専門的な運転管理が求められる。

一方の個別方式(エアコンなど)は、部屋ごとに入り切りでき、必要なところだけ運転できる手軽さがあります。建物の規模や使いかたに合わせて、どちらが向くかを設計段階で見きわめます。

熱源の省エネ運転の工夫

大きな熱源機器は電気やガスを多く使うため、いかに無駄なく動かすかが省エネの鍵になります。実務でよく使われる工夫を知っておくと、設備の見えかたが変わります。

  • 台数制御:冷凍機やポンプを複数台そなえ、必要な量に合わせて動かす台数を増減させます。真夏は全台、春秋は1台だけ、というように、そのときの負荷に見合った運転にします。
  • 部分負荷を意識する:空調は一年の多くを全力ではなく部分的な力で運転します。少ない負荷のときこそ効率よく動く機器を選ぶことが、年間の省エネにつながります。
  • 蓄熱の活用:電気料金の安い夜間に冷水や氷、温水をつくってタンクにため、昼間に使う方式もあります。昼のピークをずらし、電気を効率的に使えます。

熱源は「つくる能力」だけでなく、「どう賢く運転するか」まで含めて設計します。前回のポンプの台数や、ダクトの計画とも深く関わる部分です。

まとめ:熱源機器の基礎を押さえる

  • 熱源機器は冷房のもとの冷水、暖房のもとの温水・蒸気をつくる設備。中央熱源方式の心臓部。
  • ボイラーは温水・蒸気をつくり、冷凍機(チラー)は冷水をつくる。
  • 冷凍機は電気で動くターボ冷凍機と、熱で動き冷暖房できる吸収式冷凍機に大別される。
  • 熱の捨てかたで空冷式と水冷式に分かれ、水冷式は冷却塔で気化熱を使って冷却水を冷やす。
  • 中央熱源方式は省エネや集中管理に強く、個別方式は手軽さに強い。規模と使いかたで選ぶ。

おさらいクイズ

この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。

  1. 冷凍機とエアコンの主な違いは?

    • 冷媒を使うかどうか
    • 規模と届け方(冷凍機は冷水を作り配管で建物全体へ)
    • まったく別の原理

    正解は規模と届け方。冷凍機は大きな建物の中央空調向けです。

  2. 吸収式冷凍機が電気が少なくて済む理由は?

    • ガスや蒸気の熱でサイクルを動かすから
    • 冷媒を使わないから
    • 太陽光で動くから

    正解は1番目。電気の契約容量を抑えたい建物や、工場の余った蒸気を活用したい場合に向きます。

  3. 冷却塔が屋上によく置かれる理由は?

    • 見た目のため
    • 水を節約するため
    • 熱を大気へ逃がすので風通しのよい屋上が適するから

    正解は3番目。重い水を扱い騒音への配慮も要るため、居室から離せる屋上が選ばれます。

よくある質問

冷凍機とエアコンは何が違うのですか

基本のしくみ(冷媒で熱を運ぶ)は同じですが、規模と届け方が違います。エアコンは空気を直接冷やして各部屋へ、冷凍機は冷水をつくって配管で建物全体の空調機へ送ります。冷凍機は大きな建物の中央空調向けです。

吸収式冷凍機はなぜ電気が少なくて済むのですか

電気で圧縮機を回す代わりに、ガスや蒸気の熱でサイクルを動かすためです。電気の契約容量を抑えたい建物や、工場の余った蒸気を活用したい場合などに向いています。

冷却塔はなぜ屋上によくあるのですか

熱を大気へ逃がす設備なので、風通しがよく、蒸発した水蒸気を外へ出しやすい屋上が適しているためです。また、重い水を扱うため構造や騒音への配慮も必要で、居室から離せる屋上が選ばれます。

中央熱源方式と個別方式、どちらが良いのですか

優劣ではなく向き不向きです。大規模で長時間使う建物は中央熱源方式が効率的、小規模で部屋ごとに使いたい建物は個別方式が手軽です。建物の規模・用途・予算に合わせて選びます。