以前の記事で、アース(接地)は感電を防ぐ大切なしくみだと紹介しました。実はこの接地、建物では役割に応じてA種・B種・C種・D種という4つの種類に分けられています。図面や現場で「D種接地」といった言葉を見て、戸惑った経験がある人もいるかもしれません。
この記事では、電気設備の基礎として、接地工事の種類をやさしく整理します。なぜ種類があるのか、4つの違い、それぞれの目的、接地抵抗との関係まで、初心者にも分かるように順番に解説します。アースの記事とあわせて読むと、より理解が深まります。
なぜ接地に種類があるのか
接地の基本の役割は、アースの記事で見たとおり、漏れた電気を安全に地面へ逃がし、感電や火災を防ぐことです。では、なぜ1種類ではなく、4つに分かれているのでしょうか。
理由は、守る対象や扱う電圧が違えば、必要な性能も変わるからです。高い電圧を扱う機器と、家庭の低い電圧の機器では、危険の大きさが違います。危険が大きいほど、より確実に電気を逃がせる高い性能(低い接地抵抗)が求められます。そこで、電圧の高さや対象に応じて、A種からD種までの基準が決められています。これらは電気設備の技術基準(電技解釈)で定められた、電気工事のルールです。
電圧の高さで分かれる4種類
4つの種類は、大きく高圧側と低圧側で分けると整理しやすくなります。それぞれの対象と、接地抵抗の目安をまとめます。
| 種類 | おもな対象 | 接地抵抗の目安 |
|---|---|---|
| A種 | 高圧・特別高圧の機器、避雷器など | 10Ω以下 |
| B種 | 高圧と低圧を変える変圧器の低圧側 | 計算で定まる値 |
| C種 | 300Vを超える低圧の機器 | 10Ω以下 |
| D種 | 300V以下の低圧の機器 | 100Ω以下 |
ポイントは、扱う電圧が高く危険なものほど、接地抵抗を小さく(性能を高く)求めている点です。高圧のA種や、300Vを超えるC種は10Ω以下と厳しめ、家庭で身近な300V以下のD種は100Ω以下、という具合です。危険度に応じて、守りの強さを変えているわけです。名前のA・B・C・Dは順位や優劣ではなく、あくまで用途ごとの区分だと考えると混乱しません。
A種とB種(高圧側を守る)
まず、高圧を扱う側の接地です。
A種接地工事は、高圧や特別高圧の機器の金属製の外箱や、避雷器などに施します。高い電圧を扱うぶん万一の危険が大きいため、確実に電気を逃がせるよう10Ω以下という厳しい基準になっています。キュービクルや変圧器の記事で出てきた高圧機器は、このA種で守られています。
B種接地工事は、少し特別な役割を持ちます。高圧を低圧に変える変圧器の、低圧側に施す接地です。もし変圧器の内部で高圧側と低圧側が混ざってしまう(混触する)と、家庭用の低圧側に高い電圧が流れ込み、大変危険です。B種接地は、この高低圧混触が起きたときに、低圧側の電圧が危険なほど上がらないように地面へ逃がす、いわば私たちの側を守る最後の砦です。だからB種の接地抵抗値は、事故時に流れる電流をもとに計算して決められます。
C種とD種(身近な低圧機器)
次に、私たちの生活に身近な低圧側の接地です。300Vを境に、C種とD種に分かれます。
C種接地工事は、300Vを超える低圧の機器に施します。工場の動力機器など、比較的大きな電圧を使う設備が対象で、危険度が高めなため10Ω以下が求められます。
D種接地工事は、300V以下の低圧機器に施す、最も身近な接地です。家庭のエアコンや洗濯機、電子レンジなどのアースは、このD種にあたります。基準は100Ω以下と、A種やC種よりゆるやかです。扱う電圧が低く、危険が比較的小さいためです。私たちが「アース線をつなぐ」というとき、その多くはこのD種接地のことを指しています。
アッシュくんメモ:家電の緑色のアース線は、ほとんどがD種接地なんだ。洗濯機やレンジのアースをつなぐのは、法律(電技)でD種接地が求められているから。難しい名前だけど、身近なところでちゃんと働いているんだよ。
接地抵抗と漏電遮断器の関係
ここまで何度も出てきた接地抵抗とは、地面へどれだけ電気を逃がしやすいかを表す値です。単位はΩ(オーム)で、小さいほど電気がスムーズに地面へ流れ、安全です。だから各種類で「〇Ω以下」という上限が決められています。
ただし、C種とD種には緩和のルールがあります。その回路に、地絡(漏れ)が起きたとき0.5秒以内に自動で電気を切る漏電遮断器を設けている場合は、接地抵抗を500Ω以下まで緩めてよい、とされています。漏電遮断器がすばやく電気を止めてくれるなら、接地の性能は多少ゆるくても安全を保てる、という考え方です。以前の漏電遮断器の記事で見た「すばやい遮断」が、ここでも生きています。接地と漏電遮断器は、組み合わせて安全を高める関係にあります。
アッシュくんメモ:「接地」と「漏電遮断器」は、どちらも漏れ対策の仲間だけど役割が違うんだ。接地は漏れた電気を地面へ逃がす通り道、漏電遮断器はその漏れを見つけて電気を止めるスイッチ。2つがそろって、はじめて感電を確実に防げるんだよ。
なお、接地がきちんと効いているかは、接地抵抗計という機器で測定します。維持管理の記事で触れたように、定期的に測って基準内かを確認することが、安全を保つうえで大切です。
接地を確実にするための工夫
接地は「線をつなげば終わり」ではありません。地面へ確実に電気を逃がせる状態を、つくり・保つ工夫が必要です。設計や施工、管理の面で押さえておきたい点を挙げます。
- 地質で抵抗が変わる:接地抵抗は、土の湿り気や種類に左右されます。乾いた砂地や岩盤では電気が逃げにくく、抵抗が下がりにくいため、接地極を深く打ったり本数を増やしたりします。
- 接地極の材料と埋設:さびにくい銅や溶融亜鉛めっきの電極を、決められた深さに埋めます。腐食すると抵抗が上がるため、材料選びも大切です。
- アース線をつなぐ・外さない:家庭でも、アース端子のある機器はきちんとつなぐことが大切です。「線が邪魔だから」と外すと、いざというときに感電を防げません。
- 定期的な測定:接地抵抗は経年で悪化することがあります。接地抵抗計で定期的に測り、基準値を超えていないか確認します。
目に見えず、ふだんは働きを実感しにくい接地ですが、漏電や落雷のような「もしも」のときに、確実に電気を大地へ逃がしてくれます。地味ながら、人と機器を守る土台の設備だといえます。
まとめ:接地工事の種類を押さえる
- 接地は守る対象や電圧で、A種・B種・C種・D種の4つに分かれる(電技解釈で規定)。
- A種は高圧機器(10Ω以下)、B種は変圧器の低圧側で高低圧混触から守る要。
- C種は300V超の低圧(10Ω以下)、D種は300V以下(100Ω以下)で家庭のアースはこれ。
- 危険が大きいほど接地抵抗を小さく求める。小さいほど電気が逃げやすく安全。
- C・D種は0.5秒以内に切る漏電遮断器があれば500Ωまで緩和。接地と遮断器は組み合わせで守る。
- 接地抵抗は地質や経年で変わる。接地抵抗計で定期的に測り、基準内かを確認する。
おさらいクイズ
この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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家庭のアースの多くは何種?
- A種
- B種
- D種
正解はD種。300V以下の家電が対象で、接地抵抗は100Ω以下が基準です。
-
接地抵抗はどうあるのがよい?
- 小さいほうがよい
- 大きいほうがよい
- どちらでもよい
正解は小さいほう。漏れた電気が地面へスムーズに逃げ、感電や機器故障を防ぎやすくなります。
-
変圧器で低圧側の電圧が危険に上がるのを防ぐ、要の接地は?
- A種
- B種
- D種
正解はB種。私たちが使う低圧側を根元で守る接地です。
よくある質問
なぜ接地に4つも種類があるのですか
扱う電圧や守る対象によって、必要な安全性能が違うためです。危険の大きい高圧ほど厳しい基準(低い接地抵抗)が求められます。電圧の高さに応じてA種からD種まで分け、それぞれに合った基準を定めています。
家庭のアースは何種ですか
多くはD種接地です。300V以下の家電(エアコン・洗濯機・電子レンジなど)が対象で、接地抵抗は100Ω以下が基準です。私たちが日常でつなぐ緑色のアース線は、ほとんどがこのD種にあたります。
接地抵抗は小さいほうがよいのですか
はい。接地抵抗が小さいほど、漏れた電気が地面へスムーズに逃げ、感電や機器故障を防ぎやすくなります。だから各種類で上限が定められており、その値以下になるよう工事します。
B種接地はほかと何が違うのですか
目的が特別です。A・C・D種が機器の外箱などを守るのに対し、B種は変圧器で高圧と低圧が混ざったとき、低圧側の電圧が危険に上がるのを防ぎます。私たちが使う低圧側を根元で守る、いわば要の接地です。
