家を建てる土地が決まり、間取りの打ち合わせが楽しくなってきたころ、「地盤調査をします」と言われて戸惑う方は多いようです。目の前の土地は平らで、隣にも家が建っている。なぜわざわざ調べるのでしょうか。
今回はアッシュくんが、建物の設計にくわしいさと吉先生に、地盤調査の意味と、その結果で何が変わるのかを教わります。
結論から言うと、地盤調査は「この土地が建物の重さを何十年も支え続けられるか」を建てる前に確かめる作業です。地盤が弱いと、建物が一部だけ沈んで傾く不同沈下が起き、壁のひび割れやドアの不具合、配管の破損につながります。住宅ではスクリューウエイト貫入試験という方法で地盤の硬さを測り、必要なら表層改良・柱状改良・鋼管杭といった地盤改良工事を行ってから建てます。土地の見た目が平らでも地中の状態は分からないため、調査は事実上欠かせない工程になっています。
地盤が弱いと何が起きるのか
さと吉先生、地盤調査ってどうして必要なの? 隣にも家が建ってるし、土地は平らに見えるけど。
表面が平らでも、地中がどうなっているかは見えないんだ。土地は場所によって、硬い層がすぐ下にあるところと、やわらかい土が何メートルも続くところがある。同じ一区画の中でも、端と端で違うことすらある。
建物は何十トンという重さで地面を押し続ける。地盤がその重さに耐えられないと、建物はゆっくり沈む。全体が均等に沈むならまだいいけれど、たいていは弱い側だけが余計に沈む。これを不同沈下という。
建物が傾くと、壁にひびが入り、ドアや窓が閉まらなくなり、床にビー玉を置くと転がる。そして見えない場所では、地中の配管が引っぱられて折れたり抜けたりする。排水が流れなくなり、水道が漏れる。傾きは、暮らしのあらゆる場所に出てくるんだ。
地面の下は見えないから、建てる前に調べるしかないんだね。傾いてからでは遅いのか。
建物の重さは構造の種類でも変わります。木造と鉄筋コンクリート造では地盤への負担が大きく違うため、同じ土地でも求められる地盤の強さが変わります。構造の違いは建物の構造種別の基礎入門で解説しています。
住宅の地盤調査はどうやって行うのか
| 方法 | やり方 | 向いている建物 |
|---|---|---|
| スクリューウエイト貫入試験 | 先端がねじ状の棒に重りを載せ、回転させて地中に沈める。沈み方で地盤の硬さを測る | 戸建て住宅など小規模な建物 |
| ボーリング調査(標準貫入試験) | 地面に穴を掘り、深さごとに土を採取しながら硬さを測る。地下水の位置も分かる | マンション、ビル、大規模な建物 |
| 表面波探査 | 地面に振動を与え、伝わる速さから地盤の硬さを推定する | 補助的な調査、広い範囲の把握 |
住宅で一般的なスクリューウエイト貫入試験は、建物の四隅と中央の5か所程度で行い、半日ほどで終わります。かつてはスウェーデン式サウンディング試験と呼ばれていた方法です。深さごとの硬さがグラフになり、どの深さに硬い層があるか、やわらかい層がどこまで続くかが分かります。
アッシュくんメモ:ねじを地面に押し込んで、どれくらいスッと入るかで硬さを測るんだね。硬い層があればそこで止まる。地中の「地図」を作ってるんだ!
調査の結果で、建て方が変わる
調べて地盤が弱いって分かったら、その土地には建てられないの?
建てられるよ。地盤の状態に合わせて、地面の側を補強するか、建物の基礎の形を変えるかで対応する。地盤改良工事という。
やわらかい層が浅いところで終わっているなら、その部分の土に固まる材料を混ぜて硬くする。表層改良という方法だ。やわらかい層がもう少し深いなら、柱状改良といって、地中に固まる材料で柱を何本も作り、その柱で建物を支える。さらに深いところにしか硬い層がないなら、鋼の管を打ち込んで、硬い層まで建物の重さを届ける。鋼管杭という方法だね。
どれを選ぶかは、調査で分かった硬い層の深さと、建物の重さで決まる。だから調査なしに改良の方法は決められない。逆に言えば、調査の結果が良ければ改良は不要で、費用もかからない。調べることは、無駄な工事を避けることでもあるんだよ。
| 改良の方法 | やわらかい層の深さ | しくみ |
|---|---|---|
| 表層改良 | 浅い(おおむね2メートル程度まで) | 表面の土に固化材を混ぜて板状に固める |
| 柱状改良 | 中程度(おおむね2〜8メートル程度) | 地中に固化材の柱を作り、その柱で支える |
| 鋼管杭 | 深い | 鋼の管を硬い層まで打ち込み、建物の重さを届ける |
深さの数値は目安で、実際は調査結果と建物の条件から設計者が判断します。基礎そのものの形(ベタ基礎や布基礎)を選ぶ判断も、地盤の結果と合わせて行われます。
地震のときに起きる液状化
地盤の問題には、日常の沈下とは別に、地震のときだけ現れるものがあります。液状化です。
- 起きる条件:砂の地盤で、地下水の位置が高く、そこに強い揺れが加わること。この3つがそろうと、砂の粒の間の水が押し出され、地面が一時的に液体のようにふるまいます
- 起きること:建物が沈んだり傾いたりし、地中の軽いもの(マンホールや配管)が浮き上がります。地表に水や砂が噴き出すこともあります
- 起きやすい場所:埋立地、昔の川や沼を埋めた土地、海や川に近い低地
- 調べ方:ボーリング調査で土の種類と地下水の位置を確かめます。自治体が公開している液状化の予測図も参考になります
- 対策:地盤を固める、水を抜けやすくする、杭で硬い層に支持させるといった方法があります
地震に対する建物側の備えは耐震・制震・免震の違い入門で解説しています。建物をいくら強くしても、足元の地盤が動けば意味が薄れます。地盤と建物は一体で考える必要があります。
土地を見るときのヒント
調査する前に、土地を見て何か分かることはあるの?
調査の代わりにはならないけれど、当たりをつける手がかりはある。まず地名だ。水にまつわる字が入っている地名は、昔そこが川や沼、田んぼだった可能性を示すことがある。古い地図を見ると、今の住宅地がかつて何だったかが分かる。
それから周りの建物や道路を見る。近くの家の外壁にひびが多い、ブロック塀が傾いている、道路のマンホールの周りだけ舗装が沈んでいる。こういうサインは、その一帯の地盤が動いてきた跡かもしれない。
坂の途中の土地で、一部を削り一部を盛って平らにした場所も注意が要る。削った側は硬く、盛った側はやわらかい。同じ敷地の中で地盤の硬さが違えば、不同沈下の条件がそろってしまう。
ただ、こうした手がかりは「調べる理由」を教えてくれるだけで、「調べなくていい理由」にはならない。最後は実際に測るしかないんだ。
地中の配管が地盤の動きで傷むと、排水の不具合や漏水として現れます。しくみは給排水設備の基礎入門で解説しています。建物と外構の境目に段差ができるのも、地盤が動いたサインのひとつです。
まとめ:見えない地中を、建てる前に測る
- 地盤調査は、土地が建物の重さを支え続けられるかを建てる前に確かめる作業
- 弱い地盤では不同沈下が起き、ひび割れ、ドアの不具合、配管の破損につながる
- 住宅ではスクリューウエイト貫入試験が一般的。建物の四隅と中央で地盤の硬さを測る
- 結果に応じて表層改良・柱状改良・鋼管杭を使い分ける。結果が良ければ改良は不要
- 液状化は砂の地盤・高い地下水・強い揺れの3条件で起きる。埋立地や低地は注意
- 地名、古い地図、周囲の建物のサインは手がかりになるが、調査の代わりにはならない
おさらいクイズ
さと吉先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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不同沈下とは何ですか?
- 建物全体が均等に沈むこと
- 地面が液体のようになること
- 建物の一部だけが余計に沈んで傾くこと
正解は3番。弱い側だけが沈むため建物が傾き、ひび割れやドアの不具合、配管の破損が起きます。地盤調査で防ぐべき代表的な問題です。
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戸建て住宅で一般的に行われる地盤調査は?
- スクリューウエイト貫入試験
- 大規模なボーリング調査のみ
- 目視だけ
正解はスクリューウエイト貫入試験。ねじ状の棒を回転させて沈め、その沈み方で深さごとの硬さを測ります。半日程度で終わる調査です。
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液状化が起きる3つの条件に含まれないのは?
- 砂の地盤
- 建物が木造であること
- 地下水の位置が高いこと
正解は2番。液状化は砂の地盤・高い地下水・強い揺れの3条件で起き、建物の構造は条件に含まれません。埋立地や昔の川筋は注意が要ります。
よくある質問
地盤調査は法律で義務ですか?
住宅では、建物の保証の制度や設計の基準との関係で、実務上ほぼ必ず行われています。地盤の状態を確認せずに基礎を設計することは、安全の面でも保証の面でも現実的ではありません。「義務かどうか」より「調べずに建てる選択肢が事実上ない」と考えてください。
調査でよい結果が出れば、改良工事の費用はかかりませんか?
かかりません。調査の結果、地盤が十分に硬ければ改良は不要です。調査費用は改良が要らないことを確かめるためにも使われるので、無駄な支出ではありません。逆に、調査なしで念のための改良を行うと、必要のない工事に費用を払うことになります。
隣の家は改良していないのに、うちだけ必要と言われました。
あり得ることです。地盤は数メートル離れるだけで状態が変わることがあり、建物の重さや形によっても必要な強さが違います。隣の建物が建った年代によっては、当時は調査や改良の慣行が今と違っていた場合もあります。自分の土地の調査結果にもとづいて判断するのが正解です。
中古の家を買うとき、地盤はどう確かめればいいですか?
建物の傾き、外壁や基礎のひび割れ、ドアや窓の開閉の具合、床の水平を確かめるのが手がかりになります。建築時の地盤調査の報告書が残っていれば、それを見せてもらいます。気になる点があれば、専門家による建物の状況調査を依頼する方法があります。
地盤改良をすると、将来何か困ることはありますか?
柱状改良や鋼管杭は地中に残るため、将来その土地を売ったり建て替えたりするときに、撤去の費用や扱いが問題になることがあります。改良の方法と位置の記録を必ず残しておき、次の所有者や設計者に渡せるようにしておくことが大切です。
