初めて見る図面を渡されたとき、いきなり中央の線や記号を追い始めると、たいてい迷子になります。図面には読む順番があり、慣れた人は必ず同じ2か所から入ります。表題欄と凡例です。
今回はアッシュくんが、電気にくわしいのりめぇる先生に、この2か所の読み方を教わります。地味な枠と表ですが、ここを飛ばすと後の作業がまるごと無駄になることさえあります。
凡例は「この図面の辞書」
のりめぇる先生、図面の記号ってJISで決まってるんでしょ? それなら覚えてしまえば、どの図面でも読めるんじゃないの?
基本の形はJISの図記号で共通化されている。だから大枠は覚える価値があるよ。ただ実務では、それだけでは足りないんだ。
理由は2つある。まず、JISに定められていない記号を使う場面があること。新しい機器や、その案件だけの特殊な設備には、設計者が決めた記号が使われる。
もうひとつは、会社や案件ごとの流儀だ。同じ意味でも少し違う書き方をする、傍記の付け方に独自のルールがある、といったことが起こる。
だから図面には凡例が添えられている。「この図面ではこの記号をこの意味で使います」という宣言だね。つまり凡例は、その図面専用の辞書なんだ。JISの知識は共通語で、凡例はその現場の方言、と考えると近いかな。
共通語と方言か! だから初めての図面では、まず方言を確認するんだね。
JISの基本形については電気図面の記号の読み方入門、記号のそばに書かれる小さな文字の意味は傍記とはでくわしく解説しています。
凡例に載っている情報
| 項目 | 内容 | 確認の意味 |
|---|---|---|
| 器具の記号 | 照明、コンセント、スイッチ、感知器など | 平面図の記号の意味が分かる |
| 傍記の意味 | 記号に添える文字(防水、3路、接地極付など) | 同じ形の記号の違いが分かる |
| 盤・機器の略号 | 盤の種類、機器の符号の体系 | 系統図や機器表とつながる |
| 線種 | 実線・破線・一点鎖線などの使い分け | 配線の種類や区分が読める |
| 配管・配線の表記 | 電線の本数や太さの書き方 | 数量や仕様が読める |
とくに線種は見落としがちです。同じ1本の線でも、実線か破線かで意味が変わります。天井の中を通る配線と床の中を通る配線を線種で描き分ける、といった約束があるためです。凡例を見ずに線をたどると、まったく別の経路を読んでしまうことになります。
アッシュくんメモ:記号の形が同じでも、傍記や線種で意味が変わるんだね。凡例を見ないで読むのは、辞書を閉じたまま外国語を読むようなものか!
表題欄は「その図面の身分証明書」
図面の右下、または右端に細長く並ぶ枠が表題欄です。ここにその図面の基本情報がまとまっています。
- 図面名:「1階電気設備平面図」など。何を描いた図面かが分かります
- 図面番号:管理のための番号。分野ごとに頭文字を振る体系が使われることがあります
- 縮尺:その図面の縮尺。1枚の中に複数の縮尺がある場合は、各図のそばに個別に記されます。考え方は図面の縮尺の読み方で解説しています
- 作成日・改訂日:いつ描かれ、いつ直されたか
- 作成者・承認者:誰が描き、誰が確認したか。問い合わせ先が分かります
- 案件名:どの建物の図面か。似た案件を並行して扱うときの取り違え防止になります
図面の種類ごとの役割は電気設備図面の種類入門、平面図と系統図の違いは系統図とはをどうぞ。
いちばん重要なのは「最新版かどうか」
表題欄の日付って、そんなに大事なの? 図面の中身が読めればいい気がするけど。
実はここが、図面を扱ううえでいちばん事故が起きやすい場所なんだ。設計は進むにつれて何度も変わる。機器が大きい機種に替わる、部屋の使い方が変わる、盤の位置が動く。そのたびに図面は改訂される。
だから同じ「1階電気設備平面図」が、何枚も存在することになる。表題欄の改訂の記録を見なければ、どれが生きている図面かは分からない。
古い版で検討を進めてしまうと、その作業が丸ごと無駄になる。もっと悪いのは、古い版で工事が進んでしまうこと。据え付けたあとに「その位置は変更済みでした」と分かれば、やり直しになる。
だから慣れた人は、図面を開いたら真っ先に表題欄を見る。日付と改訂の番号を確認して、これが最新かどうかを確かめる。図面を読む技術というより、仕事の作法だね。
改訂された箇所には、雲のような形の囲み(雲マーク)や、三角に番号を入れた記号を付けて、どこが変わったかを示すのが一般的です。改訂の記録には「いつ、どこを、なぜ変えたか」が短く書かれるため、変更の経緯をたどる手がかりにもなります。
図面を読む順番
以上をまとめると、初めての図面を開いたときの流れはこうなります。
- 表題欄:案件名、図面名、日付と改訂。これが最新版かを確認します
- 凡例:その図面で使われている記号と線種の意味を確かめます
- 全体を俯瞰:図面の中で、どこに何があるかをざっと見ます
- 知りたい部分へ:自分の問いに関わる場所を詳しく読みます
- 関連する図面へ:系統図や機器表と行き来して、容量や仕様を確かめます
5番目が実務では欠かせません。1枚の図面だけで完結する情報はほとんどないためです。記号の中身は機器表に、つながりは系統図に、それぞれ書かれています。機器表の読み方は機器表とは、図面の種類ごとの役割分担は配線図と結線図と回路図の違いで整理しています。
図面を渡されたら、真ん中じゃなくて隅っこから見る。表題欄と凡例って、いちばん地味なのにいちばん最初なんだね。
そこに気づけたなら、もう図面と正しく付き合えるよ。図面は絵ではなく、約束が書かれた書類なんだ。誰が、いつ、どんな意味の記号で描いたのか。その約束を確かめてから中身を読む。この順番を守る人は、読み違いも手戻りも少ない。急いでいるときこそ、隅の枠を先に見る。それがベテランの手つきなんだ。
まとめ:辞書と身分証を先に開く
- 凡例はその図面専用の辞書。JISの基本形が共通語、凡例が現場の方言にあたる
- 凡例には器具の記号、傍記の意味、盤や機器の略号、線種の使い分けが載る
- 線種の見落としは経路の読み違いにつながる。実線と破線の意味は必ず確認する
- 表題欄は図面の身分証明書。図面名、番号、縮尺、日付、作成者、案件名が分かる
- 最大の要点は最新版かどうか。古い版で進めると作業や工事が丸ごと無駄になる
- 読む順番は、表題欄→凡例→全体→知りたい部分→関連する図面
おさらいクイズ
のりめぇる先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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図面に凡例が添えられている理由は?
- 図面の余白を埋めるため
- JISの記号を宣伝するため
- JISにない記号や、会社・案件ごとの流儀があるため
正解は3番。凡例はその図面専用の辞書です。JISの基本形が共通語、凡例がその現場の方言にあたります。
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表題欄で真っ先に確認すべきことは?
- 日付と改訂の記録(最新版かどうか)
- 作成者の名前の読み方
- 用紙のサイズ
正解は最新版の確認。設計は何度も改訂されるため、古い版で進めると作業や工事がやり直しになります。
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図面の線が実線か破線かで変わるのは?
- 図面の印刷費用
- 配線の種類や通る場所などの意味
- 何も変わらない
正解は意味が変わる。天井内か床内かといった区分を線種で描き分ける約束があるため、凡例の確認が欠かせません。
よくある質問
凡例はどの図面にも付いていますか?
図面集の最初のほうに、共通の凡例としてまとめられていることが多いです。各図面に個別に載る場合もあります。見つからないときは、図面集の目次や1枚目を確認してください。それでもなければ、作成者に問い合わせるのが確実です。
凡例に載っていない記号が出てきました。
作成者に確認するのが正解です。推測で進めるのは危険で、とくに設備の仕様に関わる記号を読み違えると、機器の選定や数量に影響します。質問は手間ではなく、事故を防ぐ作業だと考えてください。確認した内容は記録に残しておくと、後任者の助けにもなります。
データでもらった図面の最新版はどう見分けますか?
ファイル名の日付や版の番号に頼るのは危険です。名前を変えずに上書きされていることもあるためです。図面の中の表題欄と改訂の記録を必ず開いて確認してください。関係者の間で「どれが最新か」を共有する仕組みを持っている案件では、その台帳を確認するのが最も確実です。
雲マークはいつまで残しておくのですか?
案件の運用によりますが、次の改訂で前回の雲を消し、新しい変更箇所に付け直す方法が一般的です。そうすることで「今回どこが変わったか」が明確になります。過去の変更をすべて残すと、図面が雲で埋まって読めなくなってしまいます。
初心者はどこから練習すればよいですか?
手元にある図面で「表題欄を読む、凡例を読む」を毎回やることです。この2つは数分で終わりますが、習慣にしている人とそうでない人の差は大きくなります。そのうえで、凡例の記号を1つずつ平面図の上で探してみると、記号と実物の対応が身についていきます。
