「収納たっぷり!」は住まい選びの定番人気ワード。でも、収納が多い家に引っ越したはずなのに、なぜか部屋が片付かない…という声も、実は同じくらいよく聞きます。収納の悩みは「量」だけでは解決しないのです。

今回はアッシュくんが、意匠設計にくわしいさと吉先生に、自然と片付く家の収納の考え方を教わります。家探し・家づくり中の人はもちろん、いまの家の収納を見直したい人にもそのまま役立つ内容です。

収納率という「ものさし」を知ろう

アッシュくん

さと吉先生、収納ってどれくらいあれば十分なの? 多ければ多いほどいいんだよね?

さと吉先生

うん、まず量の目安から話そう。家全体の床面積のうち収納が占める割合を収納率といって、戸建てなら12〜15%程度、マンションなら8〜10%程度が目安とよく言われるんだ。

ただしこれはあくまで平均的なものさし。荷物の量は家庭でぜんぜん違うからね。それに、収納には量より大事なことがある。それが「場所」なんだ。

アッシュくん

量より場所? 収納って、あればどこでも良さそうだけど…。

片付かない家の正体は「収納と使う場所が遠い」

さと吉先生

想像してみて。掃除機の収納が2階の納戸だったら、1階のリビングを掃除するたびに階段を往復することになる。そのうち掃除機はリビングの隅に出しっぱなしになるよね。

物が散らかる理由の多くは、性格ではなくて「使う場所としまう場所が遠い」という設計の問題なんだ。だから設計の世界では、物を使う場所のそばにしまう場所を作る「適所収納」を大事にする。玄関にコート掛けと外遊びの道具、洗面所にタオルと下着、リビングに日用品。毎日の動線の上に収納があれば、家は自然に片付いていくんだよ。

アッシュくん

散らかるのは性格のせいじゃなかったんだ…! ちょっと救われた気分だよ。

収納計画は間取りと動線の設計そのものです。使いやすさを軸にした空間の考え方は、バリアフリーとユニバーサルデザイン入門とも根っこでつながっています。

「奥行きの深い収納」は要注意

収納の広さでもうひとつ見落とされがちなのが奥行きです。奥行きが深いほどたくさん入りそうに見えますが、実際は逆のことが起こります。

  • 奥の物が取り出せない:手前に物を置いた瞬間、奥は「開かずのゾーン」に。数年前の存在を忘れた物が眠る死蔵庫になりがちです
  • 浅い収納は全部が一等地:奥行き30〜45cm程度の棚は、すべての物が一目で見えて手が届く。本・食器・日用品には深さより「見渡せること」が効きます
  • 深い収納が向くのは大物だけ:布団・スーツケース・季節家電など、たまにしか出さない大物には奥行きのある押入れタイプが活躍します

つまり「しまう物に合った奥行き」が正解で、深ければ良いわけではありません。収納の中身を「毎日使う・週1で使う・季節ごと」に分けて、浅い収納と深い収納に振り分けるイメージです。

アッシュくんメモ:収納を見学するときは「奥行き」をメジャーで測ってみて。見た目の広さより、自分の持ち物に合う奥行きかどうかが、片付く家の分かれ道だよ!

出し入れは「アクション数」で数える

アッシュくん

場所と奥行きのほかに、使いやすい収納の条件ってあるの?

さと吉先生

「アクション数」という考え方が便利だよ。物を取り出すまでの動作の数のことだ。扉を開けて(1)、箱を下ろして(2)、ふたを開けて(3)取り出す収納は3アクション。棚から直接取るなら1アクション。

毎日使う物は1〜2アクションの場所へ。アクション数が多い収納に日用品をしまうと、戻すのが面倒になって出しっぱなしが始まる。「戻しやすさ」こそが、片付いた状態を保つ鍵なんだ。

アッシュくん

しまいやすさより戻しやすさ、かぁ。出しっぱなしの原因、ぜんぶそれかも…。

高さも同じ発想で決まります。よく使う物は腰から目線の高さ(ゴールデンゾーン)へ、重い物はかがめば取れる下段へ、軽くて使用頻度の低い物は上段へ。この原則を守るだけで、同じ収納でも使い勝手は見違えます。脚立がないと届かない場所に毎日の物がある家は、それだけで暮らしのストレスが増えてしまいます。

いまの家でできる収納の見直し3ステップ

  1. 出しっぱなしの物リストを作る:床やテーブルに置きっぱなしの物こそ、「収納の場所が合っていない物」の一覧表です。片付かない場所を責める前に、まず観察から
  2. 使う場所の1〜2歩以内に置き場を作る:リストの物それぞれに、使う場所のそばで1〜2アクションで戻せる置き場を割り当てます
  3. 収納の中の「一等地」を空ける:ゴールデンゾーンに使用頻度の低い物が居座っていないか点検し、毎日使う物と入れ替えます

新築やリフォームなら、この考え方をまるごと設計段階から織り込めます。持ち物リストを設計者に見せて「どこで何を使うか」を伝えると、暮らしに合った収納計画を提案してもらえます。意匠設計の仕事については意匠設計と設備設計の基本でも紹介しています。

アッシュくん

収納って「箱の大きさ」の話だと思ってたけど、ほんとは「暮らしの動き」の話だったんだね。

さと吉先生

いいまとめだね。設計者が間取りを描くとき、収納は「余った場所に入れる箱」ではなくて、朝起きてから寝るまでの動きに寄り添う相棒として配置していく。収納が上手な家は、がんばらなくても片付く家。それは毎日の小さなストレスが消える、豊かな家でもあるんだよ。

まとめ:収納は「量・場所・奥行き・アクション数」

  • 収納率の目安は戸建て12〜15%、マンション8〜10%。ただし量はスタート地点にすぎない
  • 片付く家の本質は適所収納。使う場所のそばに、しまう場所を
  • 奥行きは深ければ良いわけではない。しまう物に合わせて浅い収納と深い収納を使い分ける
  • 毎日使う物は1〜2アクションで戻せる場所へ。戻しやすさが片付けの持続力
  • 出しっぱなしの物は「性格」のせいではなく「収納計画」からのメッセージと考える

おさらいクイズ

さと吉先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。

  1. 戸建ての収納率の目安としてよく言われるのは?

    • 3〜5%
    • 12〜15%
    • 40〜50%

    正解は12〜15%程度(マンションは8〜10%程度)。ただし量はものさしのひとつで、場所と使いやすさが本命です。

  2. 物が散らかるいちばんの原因として、記事が挙げたのは?

    • 使う場所としまう場所が遠いこと
    • 本人の性格
    • 物が新しすぎること

    正解は場所の遠さ。使う場所のそばにしまう場所を作る「適所収納」で、家は自然に片付きやすくなります。

  3. 毎日使う物の置き場所として理想的なのは?

    • 5アクション以上の奥深い収納
    • どこでもよい
    • 1〜2アクションで戻せる場所

    正解は1〜2アクション。取り出しやすさより「戻しやすさ」が、片付いた状態を保つ鍵になります。

よくある質問

ウォークインクローゼットは作ったほうがいいですか?

衣類や持ち物が多い家庭には有効ですが、人が歩くための通路面積が必要になるぶん、同じ面積の壁面クローゼットより収納量が少なくなることもあります。「中で着替えたい」「全体を見渡したい」といった使い方をするかどうかで判断するのがおすすめです。

パントリー(食品庫)は必要ですか?

まとめ買いをする家庭、防災備蓄をしっかり持ちたい家庭には強い味方です。キッチンからのアクション数が少ない位置(1〜2歩)に計画できるなら価値が高く、遠い位置なら結局使われない収納になりがちです。位置とセットで検討してください。

収納が少ない賃貸ではどうすればいいですか?

考え方は同じで、家具で「適所収納」を作ります。使う場所のそばに小さな収納家具を置き、毎日使う物を1〜2アクションに配置。奥行きの深い押入れは、引き出しケースで手前と奥を分けると死蔵ゾーンを減らせます。

子どもが片付けられるようになる収納のコツは?

子どもの身長に合わせた高さで、1アクション(放り込むだけ)の収納にするのが定番です。ふた付きの箱や高い棚は大人でも戻すのが面倒なもの。おもちゃは大きなかごにざっくり、が続く仕組みです。

これから家を建てます。収納の要望はどう伝えれば?

「収納を多く」ではなく、「どこで何を使うか」を伝えるのがコツです。持ち物の量(衣類ケース何個分、本棚何台分など)と、暮らしの動線(帰宅後の動き、洗濯の流れ)をメモにして渡すと、設計者は適所収納を具体的に計画できます。収納は広さの要望より、暮らしの情報が多いほど良い提案につながります。