単線結線図が「読める」ようになったら、次の壁は「書く」ことです。白紙のCAD画面を前に、どこから手をつければいいのか分からず固まってしまう。記載する情報が多すぎて、何を書いて何を省くのか分からない。この記事は、そんな人のための実践ガイドです。

読み方の基礎は単線結線図とは|読み方入門で解説済みなので、ここでは実務で通用する書く手順に集中します。上から下へ、7つのステップで進めれば、迷わず1枚を仕上げられます。

書く前に決めておく3つのこと

作図の前に、次の3つを固めておきます。ここが曖昧なまま描き始めると、必ず描き直しになります。単線結線図は建物の電気の骨格そのものなので、骨格の条件を先に固めるのが結局いちばんの近道です。

  1. 受電方式:高圧受電か低圧受電か。高圧ならキュービクルの構成(受電点・変圧器の台数と容量)が図の骨格になります。キュービクルの基礎で全体像をつかんでおきましょう
  2. 負荷の全体像:電灯・動力・特殊負荷(エレベーター、厨房など)のグループ分けと、それぞれのおおよその容量。ここから変圧器容量と幹線の系統数が決まります
  3. 非常系統の有無:非常用照明、消防設備、非常用発電機などの防災負荷は、一般系統と分けて描くのが原則です。あとから追加すると図の構成が崩れます。停電時にどの負荷を生かすかは建物の防災計画そのものなので、建築や防災の担当者と早めにすり合わせておきましょう

書く順番:上から下へ7つの手順

単線結線図は電気の流れと同じ、上から下へ描いていきます。各ステップでやることと、そこで書き込む情報を順に見ていきましょう。

  1. 受電点を描く:図の最上部に、電力会社との責任分界点を置きます。高圧受電なら区分開閉器(PAS)や引込ケーブルから始まります
  2. 受電側の保護装置を描く:断路器・遮断器・計器用変成器・保護継電器など、受電回りの機器を電気の流れの順に配置します
  3. 変圧器を描く:電灯用・動力用など、系統ごとの変圧器を並べます。容量(kVA)と電圧(例:6.6kV/210-105V)を必ず添えます
  4. 低圧母線を引く:変圧器の二次側から横に母線を引き、ここから各幹線が分岐する骨格を作ります
  5. 幹線(フィーダ)を描く:母線から各分電盤・動力盤への幹線を縦に下ろします。1本ごとに遮断器とケーブルを描き、行き先の盤名を明記します
  6. 主要な盤と負荷を描く:幹線の先の分電盤・動力盤を描き、代表的な負荷(エレベーター、空調機など)まで示します。分岐回路の細部は盤図に譲り、単線結線図では系統の全体像を優先します
  7. 非常系統を描き分ける:非常用発電機からの回路や消防負荷は、一般系統と明確に区別して描きます。切替の仕組み(自動切替開閉器など)もここで示します

アッシュくんメモ:「上から下へ、電気と同じ向きに描く」が鉄則だよ。読み手も上から下へ読むから、描く順番がそのまま伝わりやすさになるんだ!

機器ごとに記載する情報一覧

単線結線図の価値は、線のつながりだけでなく「仕様が1枚で分かる」ことにあります。読み手はこの1枚で機器発注や保安計画の当たりをつけるからです。最低限、次の情報を記載します。

対象記載する情報
受電点受電電圧、契約電力、責任分界点の位置
遮断器・開閉器種類(記号)、定格電流、遮断容量
変圧器容量(kVA)、一次・二次電圧、結線方式
幹線ケーブル種類(CVTなど)、サイズ(sq)、こう長
盤名称、主幹の定格、設置場所(階)
主要負荷名称、容量(kW/kVA)、電圧・相

幹線のサイズは、許容電流と電圧降下の検証結果を反映させます。決め方は幹線サイズの選定手順で解説しています。

見やすく描く4つのコツ

  • 系統ごとに縦のラインをそろえる:電灯系・動力系・非常系を縦のまとまりで分けると、初見でも構成が伝わります
  • 交差を減らす配置を先に考える:線が何度も交差する図は、機器の並び順を見直すサインです。描き込む前にレイアウトのラフを作りましょう
  • 記号はJISに従い、凡例を必ず付ける:自己流の記号は事故のもと。図面のすみに凡例欄を設け、使った記号をすべて載せます
  • 余白を惜しまない:将来の増設幹線を描き足せる余白は、それ自体が設計品質です。予備回路(予備遮断器)も明記しておきます。10年後の改修工事で感謝されるのは、こういう図面です

提出前のチェックリスト

  1. 受電点から末端まで、線がどこかで途切れていないか
  2. 変圧器容量の合計と負荷の想定が整合しているか
  3. 各遮断器の定格が、下流のケーブル許容電流以下になっているか(保護の整合)
  4. 幹線のサイズ・こう長が幹線表や電圧降下計算書と一致しているか
  5. 非常系統が一般系統と描き分けられ、切替の仕組みが分かるか
  6. 盤名称が平面図・盤図と完全に一致しているか(表記ゆれは手戻りのもと)
  7. 凡例・注記・図面番号・改訂欄がそろっているか

単線結線図は、平面図や系統図など他の図面と情報がつながって初めて機能します。図面どうしの関係は電気設備図面の種類で整理しています。

よくあるNG例と直し方

  • 線だけで仕様が書かれていない:つながりは分かっても、容量やサイズが読めない図は設計図として機能しません。機器を描いたら、その場で仕様も書き込む習慣をつけます
  • 盤名称が図面ごとに違う:単線結線図では「L-2」、平面図では「2階電灯盤」。この表記ゆれは現場の混乱と手戻りの定番です。盤名称の一覧表を最初に作り、全図面で統一します
  • 非常系統があとから継ぎ足されている:一般系統の隙間に非常回路を無理やり描き足した図は、切替の仕組みが読み取れません。骨格の段階で非常系統の場所を確保しておきます
  • 予備が1つもない:遮断器も幹線も満杯の図は、竣工した瞬間から増設に対応できません。予備回路を計画的に描き込むのがプロの図面です

NG例に共通するのは「あとから直すと大工事になる」こと。最初の骨格づくりに時間をかけるほど、トータルの作図時間は短くなります。

まとめ:骨格を決めてから、上から下へ

  • 描き始める前に、受電方式・負荷の全体像・非常系統の3つを固める
  • 手順は受電点→保護装置→変圧器→母線→幹線→盤・負荷→非常系統の7ステップ
  • 機器には仕様(容量・定格・サイズ)を必ず添える。線だけの図に価値はない
  • 系統ごとに縦をそろえ、凡例を付け、増設の余白を残す
  • 提出前チェックの要は「保護の整合」と「他図面との一致」

おさらいクイズ

この記事のポイント、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。

  1. 単線結線図を描くとき、最初に置くのはどれ?

    • いちばん大きな負荷
    • 受電点(責任分界点)
    • 分電盤

    正解は受電点。電気の流れと同じく、上から下へ描いていくのが鉄則です。

  2. 変圧器に必ず添える情報はどれ?

    • メーカーの創業年
    • 設置工事の日付
    • 容量(kVA)と一次・二次電圧

    正解は容量と電圧。単線結線図は「仕様が1枚で分かる」ことに価値があります。

  3. 非常用照明や消防設備などの防災負荷はどう描く?

    • 一般系統と分けて描き分ける
    • 一般系統に混ぜて描く
    • 単線結線図には描かない

    正解は描き分ける。非常系統は切替の仕組みまで含めて、一般系統と明確に区別します。

よくある質問

単線結線図はどの設計段階で描きますか?

基本設計の段階で骨格(受電方式・変圧器構成・主要幹線)を描き、実施設計で仕様や容量を確定させていきます。早い段階で1枚描いておくと、電気室の広さやシャフトの位置など、建築側との調整もスムーズになります。

CADで描くときの注意はありますか?

記号はJISの図記号ライブラリを使い、レイヤーを系統ごとに分けておくと修正が楽です。また、容量や定格などの数値は幹線表・計算書とデータの出どころを一本化し、転記ミスを防ぐ運用が大切です。

小さな建物でも単線結線図は必要ですか?

低圧受電の小規模建物では、幹線系統図や分電盤図で足りる場合もあります。ただし高圧受電の建物では、規模によらず受変電設備の単線結線図が必須です。保安管理や申請でも使われる、建物の電気の戸籍のような図面だからです。

描いた図はいつ更新しますか?

施工中の変更や竣工時の最終状態を反映した竣工図として更新し、以後も改修のたびに直します。単線結線図は保安点検や増設検討のたびに参照される「生きた図面」なので、実際の設備と一致していることが何より大切です。

遮断容量はどう決めればよいですか?

受電点の短絡容量をもとに、その地点で流れうる短絡電流を遮断できる定格を選びます。短絡電流の計算は変圧器容量やインピーダンスから行うため、受変電設備の設計と一体で検討してください。