街を歩いていると、青みがかったビル、緑っぽく見えるビル、鏡のように空を映すビルに出会います。どれもガラス張りなのに、色がまるで違う。おしゃれのために色を選んでいるのでしょうか。
実は、あの色の多くは性能の結果です。今回はアッシュくんが、建物の設計にくわしいさと吉先生に、ビルのガラスに色がつく理由を教わります。窓は建物でいちばん熱が出入りする場所。だからこそ工夫が集中しているのです。
ふつうの板ガラスも、実はうっすら緑色
さと吉先生、ガラスって透明なはずなのに、なんで色がついて見えるビルがあるの?
まず知っておくとおもしろいのは、いわゆる普通の板ガラスにも、もともとかすかに色がついているということなんだ。
ガラスの原料には、ごくわずかに鉄分が混ざっている。この鉄分が光の一部を吸収するので、ガラスは薄い緑色を帯びる。1枚の窓を正面から見ても気づかないけれど、切り口の断面をのぞくと、はっきり緑色に見えるはずだ。厚みの方向には長い距離を光が通るから、色が濃く出るんだよ。
だから大きなガラスを何枚も並べたビルでは、その緑みが集まって全体の印象になる。美術館の展示ケースなど、色が付いては困る場所には、鉄分を減らした高透過のガラスが使われることもあるくらいだ。
透明だと思ってたガラスに、もともと色があったんだ! 今度断面をのぞいてみるよ。
色をつけて日射をやわらげるガラス
ここからが本題です。ビルの窓に色があるのは、多くの場合、太陽の熱を制御するためです。
| 種類 | しくみ | 見え方 |
|---|---|---|
| 熱線吸収ガラス | ガラス自体に成分を加えて色をつけ、日射を吸収する | ブロンズ、グレー、グリーンなど |
| 熱線反射ガラス | 表面に薄い金属の膜をコーティングし、日射を反射する | 鏡のような光沢、青銅色やシルバー |
| Low-Eガラス | 特殊な金属膜で、熱として飛ぶ放射を反射する | うっすら色味が出ることがある |
夏のオフィスで、窓際だけ暑くなった経験はありませんか。ガラスを通って入ってくる日射は、それだけ大きな熱になります。窓の面積が大きいビルほど、この熱をどう抑えるかが冷房の負荷を左右します。
Low-Eガラスの詳しいしくみと、断熱型と遮熱型の違いはペアガラスと二重窓の違いで解説しています。住宅でも同じ技術が使われています。
アッシュくんメモ:ガラスの色は「デザイン」じゃなくて「日よけ」だったんだね。ビルがサングラスをかけてるみたいなものか!
鏡のように見えるビルの正体
空や隣のビルが映り込んでいる建物があるよね。あれは鏡を貼ってるの?
鏡ではなく、熱線反射ガラスだね。表面のごく薄い金属の膜が日射を跳ね返すから、結果として鏡のように景色を映すんだ。
この方式には利点がある。熱を吸収するタイプはガラス自体が熱くなって、その熱の一部が室内側にも伝わる。反射するタイプは、そもそも入れずに跳ね返すから、室内の暑さを抑えやすい。それに外から室内が見えにくくなるので、プライバシーの面でも好まれる。
ただし注意点もある。跳ね返した光と熱が、周りの建物や道路に向かうことになるからだ。近隣にまぶしさや暑さの影響を与えないよう、配置や仕様を検討する必要がある。設計というのは、自分の建物の中だけを考えていればいい仕事ではないんだよ。
色以外にもガラスは働いている
ビルの窓には、色に表れない性能も組み込まれています。
- 安全性:割れたときに粒状になる強化ガラスや、間に膜を挟んで飛散を防ぐ合わせガラスが使われます。高層階では落下の危険があるため重要です
- 断熱性:2枚のガラスの間に乾いた空気やガスを封じた複層ガラスで、熱の出入りを抑えます
- 遮音性:厚みや構成を工夫して、外の騒音を軽減します。幹線道路沿いや空港周辺では重要な性能です
- 防火性:延焼のおそれのある部分では、火災に耐える性能を持つガラスが求められることがあります
つまり1枚の窓が、熱・光・音・安全という複数の要求に同時に応えているわけです。建物の熱の出入りを抑える考え方はパッシブデザインの基礎入門でも解説しています。
色を選ぶことは、街の印象を決めること
ガラスの色は性能の結果ですが、同時に建物の外観そのものでもあります。同じ性能を満たすガラスの中から、どの色味を選ぶか。その判断は意匠設計の領域です。
- 周囲との調和:まわりの建物や街並みの色調に合わせるか、あえて対比させるか
- 時間による変化:ガラスは光の当たり方で表情が変わります。朝と夕方、晴れと曇りで印象が大きく違って見えます
- 室内から見える色:色の付いたガラス越しに外を見ると、景色にもその色が乗ります。働く人が一日中見る景色の色になるため、意外に重要な判断です
ガラスひとつを選ぶ場面に、省エネ、安全、快適さ、そして街の景観という複数のものさしが重なっています。設計とは、こうした要求の重なりを一つの答えにまとめる作業なのです。
街のビルの色って、デザイナーの好みだけで決まってると思ってた。あの一枚ずつに、暑さや安全の理由が入ってたんだね。
建築の面白さって、見た目と性能が切り離せないところにあるんだ。美しく見せるための選択が、そのまま省エネや快適さにつながることもあれば、その逆を調整しなければならないこともある。街を歩きながら「このビルはなぜこの色なんだろう」と考えてみてほしい。答えを想像できるようになったころには、きみはもう建築を読む人になっているよ。
まとめ:色は日射をあやつるための工夫
- ふつうの板ガラスも原料の鉄分でうっすら緑色。断面を見ると分かる
- 熱線吸収ガラスは色をつけて日射を吸収、熱線反射ガラスは金属膜で日射を反射する
- 鏡のように見えるビルは熱線反射ガラス。室内の暑さを抑え、プライバシーにも有利
- 反射する光と熱は周囲へ向かうため、近隣への影響も設計で検討される
- ガラスは色以外にも、安全性・断熱性・遮音性・防火性といった性能を担っている
- 色の選択は省エネと意匠の両方に関わる、複数のものさしが重なる判断
おさらいクイズ
さと吉先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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ふつうの板ガラスがうっすら緑色に見える理由は?
- 緑の塗料を混ぜているから
- 空の色が映るから
- 原料にごくわずかな鉄分が含まれ、光の一部を吸収するから
正解は鉄分。厚み方向には光が長い距離を通るため、断面をのぞくと緑色がはっきり見えます。
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鏡のように景色を映すビルのガラスは?
- 熱線反射ガラス
- 合わせガラス
- すりガラス
正解は熱線反射ガラス。表面の薄い金属膜が日射を跳ね返すため、鏡のように見えます。室内の暑さを抑え、外から中が見えにくくなります。
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熱線反射ガラスを使うとき、設計で配慮すべき点は?
- ガラスが軽くなりすぎること
- 反射した光と熱が周囲の建物や道路へ向かうこと
- 夜に光らなくなること
正解は周囲への影響。跳ね返した光と熱は近隣に向かうため、まぶしさや暑さを与えないよう配置や仕様が検討されます。
よくある質問
住宅の窓にも色つきのガラスは使えますか?
使えます。西日の強い部屋や、大きな窓のある住宅では検討する価値があります。ただし室内が暗くなる、景色に色が乗るといった面もあるため、日射を抑えたい度合いと明るさのバランスで判断します。断熱を優先するならLow-Eガラスの複層という選択肢もあります。
窓ガラスに貼る遮熱フィルムでも同じ効果がありますか?
ある程度の効果が期待できます。既存の窓に後から施工できるのが利点です。ただし製品によって性能に幅があり、貼り方によってはガラスに熱がこもって割れる原因になることもあります。とくに複層ガラスや網入りガラスへの施工は注意が必要なので、専門業者に相談してください。
網入りガラスは防犯用ですか?
防犯ではなく、主に防火のためのものです。火災時にガラスが割れて破片が落ちたり、開口部から炎が広がったりするのを抑える目的で使われます。防犯を目的とする場合は、割れにくい合わせガラスなど別の種類が選ばれます。
ガラスは何年くらいもちますか?
ガラス自体は非常に長持ちしますが、複層ガラスの内部に湿気が入って曇る、シール材が劣化する、サッシの部品が傷むといった形で不具合が出ます。窓の内側が結露ではなく曇っている場合は、複層ガラスの封止が切れているサインかもしれません。
ビルの窓ガラスはどうやって交換するのですか?
大きなガラスは重量があるため、専用の吸盤やクレーンを使って搬入・据付を行います。高層階では足場やゴンドラの計画が必要になり、交換は大がかりな工事になります。だからこそ、最初にどのガラスを選ぶかという判断が、その後の何十年を左右します。
