「電圧V=電流I×抵抗R」。オームの法則は、中学理科で習い、電気工事士や電験三種などの資格試験にも必ず登場する、電気の世界でいちばん有名な公式です。ただ、公式を知っていることと、実際に問題がスラスラ解けることの間には、少しだけ距離があります。

今回はアッシュくんが、電気にくわしいのりめぇる先生と一緒に、オームの法則の計算問題を基本から応用まで解いていきます。読み終わるころには、ドライヤーに流れる電流を暗算できるようになっているはずです。公式そのものの意味をおさらいしたい方は、先にオームの法則の基礎をどうぞ。

準備運動:魔法の三角形で3パターンを1つにする

アッシュくん

のりめぇる先生、V=IRは知ってるんだけど、問題によって「Iを求めよ」とか「Rを求めよ」とか聞かれ方が変わると、式の変形でモタモタしちゃうんだ。

のりめぇる先生

そんなときは「魔法の三角形」だ。三角形を描いて、上にV、下にIとRを並べて書く。そして求めたい文字を指で隠すと、残った形がそのまま計算式になる。

Vを隠せば下に残るのはI×R。Iを隠せばV/R(VをRで割る)。Rを隠せばV/I。つまり3つの式を覚える必要はなくて、三角形1つで全部済むんだよ。

アッシュくん

隠したら式が出てくるなんて手品みたい! これなら試験中もあわてなさそう。

基本の3問:まずは素直に当てはめる

問1(電流を求める):100Vの電源に20Ωの抵抗をつなぐと、流れる電流は?

答え:I=V÷R=100÷20=5A。三角形でIを隠すとV/Rが残ります。

問2(電圧を求める):0.5Aの電流が200Ωの抵抗に流れているとき、抵抗の両端の電圧は?

答え:V=I×R=0.5×200=100V

問3(抵抗を求める):100Vをかけたら2Aが流れた。この機器の抵抗は?

答え:R=V÷I=100÷2=50Ω

アッシュくんメモ:計算の前に単位をそろえるのを忘れずに! mA(ミリアンペア)は1000分の1A、kΩ(キロオーム)は1000Ωだよ。200mA=0.2A、2kΩ=2000Ωに直してから三角形に入れよう。

応用①:直列と並列の合成抵抗

問4(直列):10Ωと30Ωの抵抗を直列につなぎ、100Vの電源につないだ。回路に流れる電流は?

直列の合成抵抗は足し算:10+30=40Ω。よってI=100÷40=2.5A。直列では同じ電流が両方の抵抗を流れ、電圧は10Ω側に25V、30Ω側に75Vと、抵抗の比で分け合います(合計はちゃんと100V)。

問5(並列):同じ10Ωと30Ωを並列につないだ場合の合成抵抗は?

2本の並列は「積÷和」が速い:(10×30)÷(10+30)=300÷40=7.5Ω。並列にすると、いちばん小さい抵抗(10Ω)よりさらに小さくなるのがポイント。電気の通り道が増えるので、全体としては流れやすくなるのです。

応用②:ワット数から電流を求める(実務でいちばん使う)

アッシュくん

でも家電のラベルには、抵抗じゃなくて「1200W」みたいなワット数が書いてあるよね。あれはオームの法則とどうつながるの?

のりめぇる先生

電力の公式P=V×Iを組み合わせるんだ。これも三角形にできて、上にP、下にVとI。電流を知りたければI=P÷V。

たとえば1200Wのドライヤーを100Vで使うと、I=1200÷100=12A。ついでに抵抗も出せる。R=V÷I=100÷12≒8.3Ωだ。家庭のコンセント回路は20Aのブレーカーで守られていることが多いから、12Aのドライヤーと8Aの電気ストーブを同じ回路で使うと合計20Aで、ブレーカーが落ちる寸前。オームの法則と電力の式が読めると、こういう生活の判断ができるようになる。

問6:1250Wの電気ケトルを100Vで使うと流れる電流は? 答え:1250÷100=12.5A

問7:60W形の白熱電球(消費電力60W)と、同じ明るさのLED電球(約8W)。100Vで使ったときの電流はそれぞれ? 答え:白熱は0.6A、LEDは0.08A。電流が10分の1近くになる、これがLEDの省エネの正体です。W・VA・kVAの単位の関係は電気の単位V・A・W・kVAの違いで整理しています。

つまずきやすいポイント3つ

採点する側から見ると、オームの法則の間違いはほぼ次の3つに集中します。逆に言えば、ここだけ気をつければ得点源になります。

  1. 単位の直し忘れ:問題文の500mAを0.5Aに直さずそのまま掛けてしまうミス。数字を式に入れる前に、A・V・Ωの基本単位にそろえる癖をつけましょう
  2. 直列と並列の取り違え:直列は足し算、並列は積÷和。回路図を見たら、まず「電気の通り道が1本か、枝分かれしているか」を指でなぞって確認するのが確実です
  3. 割る向きの混乱:I=V÷RなのにR÷Vと計算してしまうミス。迷ったら三角形を書き直すこと。試験の余白に三角形を2つ(V-I-RとP-V-I)描いておくと、緊張していても間違えません
アッシュくん

「ワット数の下2桁を消せばアンペア」の暗算、さっそくドライヤーで試したら一瞬で出せたよ! 計算問題って、生活の道具にもなるんだね。

のりめぇる先生

それこそがオームの法則のすごさだよ。150年以上前に発見された式が、いまも試験問題から家のブレーカー対策まで現役で働いている。数をこなすほど三角形は速く回るから、身のまわりの家電のラベルを見つけたら、電流を暗算する遊びを続けてごらん。気づいたら計算分野が得意になっているはずだ。

まとめ:三角形2つで、試験も生活も戦える

  • オームの法則はV=I×R。魔法の三角形で「求めたいものを隠す」と変形いらず
  • 計算前に単位をそろえる。mAは1000分の1A、kΩは1000Ω
  • 直列の合成抵抗は足し算、2本の並列は「積÷和」。並列は最小の抵抗より小さくなる
  • 家電はP=V×Iで電流に変換。1200Wのドライヤーは100Vで12A
  • 回路のブレーカー容量(20Aなど)と見比べれば、「同時使いで落ちるか」を計算で予測できる

おさらいクイズ

仕上げの3問! 三角形を思い浮かべながら解いてみてね。

  1. 100Vの電源に25Ωの抵抗をつなぐと流れる電流は?

    • 2.5A
    • 4A
    • 25A

    正解は4A。Iを隠すとV/Rが残るので、100÷25=4Aです。

  2. 20Ωの抵抗2本を並列につないだときの合成抵抗は?

    • 10Ω
    • 20Ω
    • 40Ω

    正解は10Ω。積÷和=(20×20)÷(20+20)=400÷40=10Ω。同じ値の2本並列は「半分になる」と覚えると速いです。

  3. 1000Wの電子レンジ(100V)に流れる電流は?

    • 0.1A
    • 1A
    • 10A

    正解は10A。I=P÷V=1000÷100=10Aです。20A回路の半分を1台で使う計算になるので、台所に専用回路が欲しくなる理由が分かります。

よくある質問

V=IRとE=IRの2つの書き方を見ます。違いはありますか?

意味は同じです。電圧の記号として、理科ではV、電気工学ではE(起電力)を使う流儀があるだけで、計算方法は変わりません。資格試験ではE=IRの表記に出会うことが多いので、両方見慣れておくと安心です。

交流の家庭用電源でも、オームの法則はそのまま使えますか?

電気ストーブやケトルのような熱を出す機器(抵抗負荷)では、ほぼそのまま使えます。一方、モーターやエアコンのような機器では、電圧と電流のタイミングのずれ(力率)が絡むため、単純なV=IRでは正確に計算できません。まずは抵抗負荷で感覚をつかむのが上達の近道です。

契約アンペアの計算にも使えますか?

使えます。同時に使う家電のワット数を合計し、100Vで割れば必要な電流の目安が出ます。たとえば合計4000Wなら40A。契約アンペアと家電の関係は契約アンペアと電気容量の基礎でくわしく解説しています。

計算問題の練習は何から始めればいいですか?

この記事の問1〜3のような「素直な代入問題」を、数字を変えながら繰り返すのが第一歩です。次に直列・並列の合成抵抗、最後にワット数からの変換へ進むと、電気工事士の筆記試験の計算分野の土台ができあがります。

暗算のコツはありますか?

家庭用は100Vなので、「ワット数の下2桁を消せばアンペア」という近道が使えます。600Wなら6A、1500Wなら15A。この暗算だけでも、たこ足配線がブレーカーの限界に近いかどうかを、その場で見積もれるようになります。