住宅の給湯機を選ぶとき、ガス給湯器と並んで候補に挙がるのがエコキュートです。名前は聞いたことがあっても、電気温水器と何が違うのか、なぜ「エコ」なのか、はっきり説明できる人は少ないかもしれません。
今回はアッシュくんが、機械設備にくわしいエース先生に、エコキュートのしくみと、選ぶ前に確かめておきたい点を教わります。
結論から言うと、エコキュートは空気の熱を集めてお湯を沸かし、タンクにためておく電気の給湯機です。ヒーターで直接水を温める電気温水器と比べて、使う電気はおよそ3分の1で済みます。料金の安い夜間に沸かして日中に使う前提で設計されているため、向いているのは、タンクと屋外機の置き場所があり、お湯の使い方が毎日ある程度決まっている家です。選ぶときの確認点は、湯切れ・水圧・運転音・設置場所の4つです。
なぜ電気温水器より少ない電気で沸くのか
エース先生、エコキュートも電気温水器も電気でお湯を沸かすんでしょ? 何が違うの?
電気の使い方が根本から違うんだ。電気温水器は、電気ヒーターで水を直接温める。電気ポットと同じで、電気1のエネルギーから熱1が出てくる。
エコキュートは、電気でヒーターを温めるのではなく、電気でポンプを回して空気から熱を集める。エアコンの暖房と同じヒートポンプという仕組みだね。外の空気にはたくさんの熱が含まれていて、それをかき集めてお湯に移す。だから電気1のエネルギーで、熱3くらいを取り出せる。
つまり同じお湯を沸かすのに、電気の使用量がおよそ3分の1で済む。これが「エコ」の正体だよ。魔法ではなくて、空気という無料の熱源を借りているんだ。
空気の熱を借りてるのか! エアコンの暖房と同じ仕組みでお湯を作ってるなんて知らなかったよ。
ヒートポンプが熱を運ぶしくみはエアコンとヒートポンプの基礎で解説しています。冷蔵庫もエアコンもエコキュートも、同じ原理の親戚です。
タンクにためて使う、という設計思想
エコキュートのもうひとつの特徴は、お湯を使うときに沸かすのではなく、あらかじめ沸かしてタンクにためておくことです。
| エコキュート(貯湯式) | ガス給湯器(瞬間式) | |
|---|---|---|
| お湯の作り方 | 夜間にまとめて沸かし、タンクにためる | 使うたびにその場で沸かす |
| 沸かす時間帯 | 料金の安い夜間が基本 | 使うとき |
| お湯の量 | タンクの容量が上限(湯切れがある) | 使い続けられる(号数の範囲で) |
| 水圧 | やや弱い傾向(高圧型もある) | 水道の圧力に近い |
| 設置 | タンクと屋外機の2つ。重量があり基礎が要る | 壁掛けや据置の1台 |
夜間に沸かすのは、時間帯によって電気の単価が変わる料金プランを前提にしているからです。安い時間に沸かして、高い時間には沸かさない。この使い方が合う家ほど、経済的なメリットが大きくなります。近年は、昼間に太陽光発電の余った電気で沸かす運転も選べる機種が増えています。
アッシュくんメモ:「必要なときに沸かす」か「安いときに沸かしてためる」か。給湯機の設計思想がぜんぜん違うんだね。ガス給湯器の話は号数の記事も参考になるよ!
瞬間式の給湯器の能力の考え方は給湯器の号数とは、給湯の方式全体は給湯設備の基礎入門をどうぞ。
選ぶ前に確かめる4つのこと
電気代が安くなるなら、みんなエコキュートにすればいいんじゃない?
向いている家と向いていない家があるんだ。確かめてほしいのは4つ。
ひとつめは湯切れ。タンクの容量以上のお湯は出ない。来客が多い日や、家族が続けてお風呂に入る家では、容量の選び方を間違えると夜にお湯が足りなくなる。
ふたつめは水圧。ためたお湯を出す方式だから、水道直結のガス給湯器よりシャワーの勢いが弱く感じることがある。気になる人は高圧型を選ぶ。
みっつめは運転音。屋外機は夜間に動く。音そのものは大きくないけれど、低い音が隣の家の寝室に届いて問題になった例がある。置き場所は隣家との位置関係を見て決める。
よっつめは設置場所。タンクは水を満たすと数百キロになるから、しっかりした基礎が要る。タンクと屋外機の2つを置く面積も必要だ。この4つが満たせるなら、エコキュートは長く付き合える良い選択になるよ。
タンクの容量はどう選ぶか
- 370リットル前後:3から4人の家族の目安として案内されることが多い容量です
- 460リットル前後:4から5人、またはお湯を多く使う家族向け
- 迷ったら大きめ:湯切れの不便は毎日続きますが、容量に余裕があっても沸かす量は自動で調整されます
- 使い方の変化を見込む:家族が増える、二世帯になる、といった将来の変化も考えておきます
タンクの容量は「一度に使える上限」であり、毎日その量を沸かすわけではありません。多くの機種は使用量を学習して、必要な分だけ沸かします。
知っておきたい注意点
- タンクの湯は飲用ではない:ためた水なので、飲み水としては使わないよう案内されています。料理には給水側の水を使います
- 停電時に水が取り出せる:多くの機種は、停電しても手動でタンクの水を取り出せます。災害時の生活用水として役立ちます
- 冬は沸かす電気が増える:外気の熱を使うため、寒いほど効率は下がります。それでもヒーター式より有利ですが、寒冷地向けの機種があります
- 定期的な手入れ:タンクの水抜きや、逃し弁の点検など、取扱説明書に沿った手入れで寿命が延びます
- 凍結への備え:屋外の配管は凍結対策が必要です。冬の備えは水道管の凍結はなぜ起きるで解説しています
設備の寿命と更新の考え方は設備の更新はいつをどうぞ。給湯機は毎日使う設備なので、故障してから慌てない計画が大切です。
空気の熱を借りて、夜のうちに沸かしてためておく。エコキュートって、時間の使い方まで設計に入ってる給湯機なんだね。
いい表現だね。設備は「性能」だけでなく「いつ動かすか」で価値が変わる。安い時間に沸かす、余った太陽光で沸かす、需要の少ない夜に働く。時間をずらすという発想は、建物全体のエネルギーを考えるときの基本でもあるんだ。
まとめ:空気の熱を借りて、夜にためる
- エコキュートはヒートポンプで空気の熱を集めてお湯を沸かし、タンクにためる電気の給湯機
- ヒーターで直接沸かす電気温水器と比べて、使う電気はおよそ3分の1
- 料金の安い夜間に沸かす前提の設計。昼間に太陽光の余剰で沸かす運転もある
- 確認点は湯切れ・水圧・運転音・設置場所の4つ
- タンクの容量は家族の人数とお湯の使い方で選ぶ。迷ったら大きめ
- タンクの湯は飲用不可。停電時は生活用水として取り出せる
おさらいクイズ
エース先生の話、覚えられたかな? 直感で選んでみてね。
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エコキュートが少ない電気でお湯を沸かせる理由は?
- 高性能なヒーターを使っているから
- 電気で空気の熱を集めてお湯に移しているから
- タンクが大きいから
正解はヒートポンプ。電気でヒーターを温めるのではなく、空気の熱をかき集めてお湯に移します。電気1で熱3くらいを取り出せます。
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エコキュートの選定で確かめるべき4つに含まれないのは?
- 湯切れ
- 運転音
- ガスの配管
正解は3番。エコキュートは電気で動くのでガス配管は不要です。確かめるのは湯切れ・水圧・運転音・設置場所です。
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エコキュートのタンクの湯について正しいのは?
- 飲用には使わず、停電時は生活用水として取り出せる
- そのまま飲める
- 停電すると一切使えない
正解は1番。ためた水なので飲用は避けますが、多くの機種で停電時に手動で取り出せ、災害時の備えになります。
よくある質問
ガス給湯器からエコキュートに替えると、必ず光熱費は下がりますか?
必ずとは言えません。電気とガスの料金プラン、お湯の使い方、地域の気候によって結果が変わります。夜間の安い電気を使える契約で、お湯の使い方が毎日安定している家ほど有利になります。見積りの際に、自宅の使用状況をもとにした試算を出してもらうのが確実です。
マンションにも設置できますか?
タンクと屋外機を置く場所と、重量を支える構造、電気の容量が確保できるかが条件になります。集合住宅では制約が多く、設置できない場合も少なくありません。管理規約の確認と管理組合への相談が必要です。
お湯が足りなくなったらどうなりますか?
多くの機種には、必要なときに追加で沸かす機能があります。ただし沸くまでに時間がかかり、割高な時間帯の電気を使うことになります。湯切れを繰り返す場合は、沸かす設定を見直すか、容量の大きい機種への変更を検討します。
エコキュートの冷媒は何ですか?
多くの機種で二酸化炭素を冷媒として使っています。フロンではなく自然界にある物質を使う「自然冷媒」の代表例で、環境への影響が小さい方式です。冷媒の規制の流れはエアコンの冷媒とはで解説しています。
ビルや施設でもヒートポンプの給湯は使われますか?
使われています。ホテルや福祉施設、スポーツ施設など、お湯を大量に使う建物では、業務用のヒートポンプ給湯機で夜間に沸かして貯湯する方式が採用されることがあります。建物の使われ方に合わせて、瞬間式と貯湯式を組み合わせる設計も行われます。
